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土井淑平著
『放射性廃棄物のアポリア ―フクシマ・人形峠・チェルノブイリ― 』

 

  ◇2012年3月5日発売
  ◇発行=農山漁村文化協会
  ◇222ページ、定価1600円+税

 

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 目次

 

  序 章 わたしたちは誰しもフクシマの子である
   1 福島原発事故の環境復旧と人形峠のウラン残土撤去
   2 始末におえない原発の廃炉と放射性廃棄物に注目しよう
   3 原子力産業の献金で買収された議会と政党の政治家たち
   4 米国債売却による復興財源と住民投票による脱原発の提案    

  第一章 フクシマで何が起きたか

   ― 世界を震撼させた同時多発の巨大事故 ―
   1 メルトダウンからメルトスルーへ
   2 地震列島の上に立つ原発の危険性
   3 放射能の大量放出と国内国外への拡散
   4 ふるさとを追われる住民と子どもたちの被ばく
   5 大地・上水水・農産物・畜産物・水産物の汚染
   6 高濃度の放射能による深刻な海洋汚染
  第二章 あとは野となれ山となれ                 
   ― フクシマと人形峠と核廃棄物を結んで ―
   1 人形峠のウラン採掘とウラン残土の放置
   2 ラドンによる被ばくと肺ガンの多発
   3 人形峠と福島の汚染の状況を比較して
   4 福島原発事故で汚染された大地の環境復旧計画
   5 福島原発事故の廃炉と放射性廃棄物の行くえ
   6 使用済み核燃料と高レベル放射性廃棄物
   7 使用済みの中間貯蔵と高レベルの最終処分
   8 人形峠に立ち返って核のゴミ戦争を考える
  第三章 右であれ左であれわがふるさと                         
   ― 日本の原子力開発と反原発運動の歴史 ― 
   1 漁民の海戦で始まった日本の反原発運動
   2 もうひとつの戦争としての原子力の平和利用
   3 地域の論理が中央の論理を超えるとき
   4 政党や労組と一線を画する草の根の住民運動
   5 ピラミッド型階層構造とネットワーク構造
   6 ニューウェーブとオールドウェーブ
   7 チェルノブイリ後の反原発と脱原発
   8 原子力産業の巻返しと反原発運動の現在
  第四章 チェルノブイリの墓銘碑                
   ― 地球を駆け巡った核暴走の巨大事故 ― 
   1 核暴走した原子炉が大爆発して炎上
   2 決死隊による事故処理と膨大な原発難民
   3 地球を駆け巡った放射能と汚染食品
   4 女性と赤ん坊を襲った放射能の爪跡
   5 急性障害の犠牲者と緩慢なるジェノサイド
  第五章 スリーマイルの残骸                  
   ― 全米をパニックに陥れたメルトダウン事故 ―
   1 あわやチャイナ・シンドローム!
   2 一四万四〇〇〇人が全米二一州に逃げ出す
   3 メルトダウンで放出された大量の放射性物質
   4 痛めつけられた動植物と死にすぎた赤ん坊
  あとがき

 

 

 

著者の言葉

 

 2011年3月に発生した福島第一原発事故を受けて、この事故に関する多くの本や雑誌が相次いで刊行されました。しかし、あれから1年にもなろうとしているのに、福島第一原発事故による農産物や畜産物や水産物や土壌や汚泥やがれきなどの汚染と被害の実態について、むろん個々の問題を取り上げたさまざまな観点からの報告や論考はあっても、それら事故の影響を総括的に一目で見渡せるようなまとまったテキストがありません。
 本書は事故発生以来たんねんに事実経過をフォローしてきた著者が、まずフクシマで起きたことを最新の情報とデータから明らかにしようとしたものです。これを踏まえることによって、フクシマの事故のこれまでの経緯と実態をおおまかにつかむことができるのみならず、これからフクシマの事故で日々生起するであろう新たな出来事とデータを把握し整理していくための、たしかな視角と方法を提供する基礎的なテキストにもなると信じています。周知のように、フクシマの現実をめぐっては事実も情報もめまぐるしく動いているので、これをどうとらえるかが大事なポイントになってくるわけです。
 このように、本書はまずフクシマの事故の実態と影響の把握を主眼としながら、フクシマの環境復旧をわたしが20年以上取り組んできた人形峠の経験から考察し、あらためて始末におえない放射性廃棄物のアポリア(難問)に注意を喚起するものです。げんに、フクシマの事故により大量に放出された放射能による人びとの被ばくに加えて、汚染された土壌・山野・がれき・汚泥・焼却灰などのあと始末と行き場が大問題になっています。これらはすべて始末におえない放射性廃棄物であり、すでにあちこちで〝核のゴミ戦争〟が始まっています。
 たとえば、政府は汚染土壌等は、①3年でいど福島県内の各市町村に仮置き②福島県内の中間貯蔵施設で30年保管③そのあと福島県外の最終処分場に移す、といとも簡単そう公表していますが、そんなに簡単にコトが運ばないことは明らかです。たとえば、政府から中間貯蔵施設の設置の申し入れを受けた双葉郡の双葉町長は、「被害者に責任を取らすのか」とこれを拒否する姿勢を鮮明にしています。最終処分場を県外にとの構想も、県外の各自治体の猛反対に会うことは必至で、このような状況下で中間貯蔵施設が最終処分場にならないという保証はどこにもありません。
 この問題を考えるとき、わたしたちが取り組んできた人形峠のウラン残土の問題、なかんずく、鳥取県東郷町(現・湯梨浜町)方面(かたも)地区のウラン残土撤去運動が、事実に基づく1つの重要なヒントになります。日本の原子力開発の起点に位置する岡山・鳥取県境の人形峠周辺には、トータルで45万立法メートルもの放射性ウラン残土が野ざらしで放置され、ウラン採掘から30年後の1988年の放置発覚以来、方面地区の住民と自治会がウラン残土の撤去を要求して立ち上がりました。
 旧動燃(現・日本原子力研究開発機構)は、方面地区の1万6000立法メートルのウラン残土のうち、放射線レベルが比較的高い3000立法メートルの撤去を自治会に約束しましたが、その撤去先に予定していた人形峠事業所の地元である岡山県の反対を口実に、 約束は18年もズルズルと引き延ばされ先送りされました。最終的には方面地区の榎本益美さんによる自主撤去の実力行使、並びに、自治会と住民のウラン残土の撤去訴訟を経て、最高裁の決定で3000立方メートルの撤去が確定し、2006年に方面地区から撤去され、人形峠県境の鳥取県有地でレンガ加工のうえ、2011年の福島第一原発事故の発生から3ヶ月後の6月に県外搬出を完了しました。

 この方面地区のウラン残土撤去運動は、旧動燃・国・県・町当局による何重もの住民弾圧で押し潰されそうになりながら、わたしたちや小出裕章さんの支援もあって18年間よく持ちこたえました。新たに登場した片山善博知事(菅直人政権の自治相)が行政支援で訴訟費用を負担するという、明治このかた前代未聞の画期的な出来事で訴訟に勝利し、ついに撤去の要求を貫徹しました。一般にはあまり知られていないこととはいえ、方面自治会のウラン残土撤去訴訟は、原発関連の訴訟では唯一の勝訴判決として、特筆大書さるべきことでもあります。
 しかしながら、18年(レンガ加工の終了と搬出までには24年)にも及ぶ、この自治会と住民の苦闘のあいだに、方面地区のウラン残土の撤去先は岡山県と鳥取県のあいだで、ひいてはまた、鳥取県内の自治体と自治会のあいだで、いわゆる〝核のゴミ戦争〟を招き寄せただけでなく、そのウラン残土の一部を米国ユタ州の先住民の土地にある製錬所に、6億6000万円もの国民の税金を無駄遣いして〝鉱害輸出〟する、というとんでもない 大脱線の過痕を残しました。この間、本書で詳述の通り、方面地区のウラン残土の撤去先は、なんと2転3転どころか4転5転6転…、と迷走に迷走を続けたのでした。
 この人形峠の経験はフクシマの事故処理への重大な警鐘です。フクシマの事故処理を考えるとき、汚染土壌やがれきなどの放射性廃棄物のあと始末もさることながら、高レベル
放射性廃棄物たる使用済み核燃料を含む廃炉のあと始末は、もっともっとはるかに困難かつ厄介です。政府は廃炉までの工程として、①原子炉建屋の除染など(2年後の2013年度まで)②格納容器の修復など(10年後の2021年度まで)③溶融燃料の回収、原子炉建屋の解体(30年~40年後の2041年~2051年まで)、とのスケジュールを公表しましたが、これまた見通しは真っ暗といわねばなりません。
 1979年に事故を起こしたスリーマイル島原発2号機は、14年かけて汚染水を除去したものの、事故から33年後の現在も建屋を解体できず、いまだ残骸をさらしたままです。1986年のチェルノブイリ原発4号機も、事故の直後に石棺で覆っていましたが、その石棺のコンクリートのひびや穴から放射能が漏れ出るため、その石棺をかまぼこ状のアーチ構造物の新シェルターで丸ごと覆う計画が進められています。
 ところで、政府がいうように数十年ていどで廃炉のあと始末ができると考えたら、大間違いです。なぜなら、使用済み核燃料が含む高レベル放射性廃棄物の毒性は、数十年どころか一〇万年、一〇〇万年も続くからです。つまり、少なくともそれだけの期間は、放射能を環境から隔離しないといけないわけですが、いったい人類の生存すら危ういのに、一〇万年、一〇〇万年も続く企業や国家があるでしょうか。 それを誰が責任をもって管理できるのでしょうか。
 もうこれは〝空想科学小説〟ないしは〝未来小説〟の世界といわざるを得ません。原子力開発の入口の放射性廃棄物たるウラン残土の場合、たった30年前の放置物のあと始末すらろくにせず、放ったらかしていたではありませんか。原発が〝砂上の楼閣〟ならぬ〝妄想の楼閣〟の上に成り立っていることに、いやでも気づかざるを得ません。
 現在、日本中で放射性廃棄物は糞詰まりの状況です。いうまでもなく捨て場がないかたらです。とりわけ、使用済み核燃料を含む高レベル放射性廃棄物は、どこも拒否するので政府や当局は困り果てています。このため、青森県下北半島が放射性廃棄物の集中投棄地とされ、それでも満杯状態のため日本中の辺境や離島など過疎地が狙われ、全国各地で放射性廃棄物の受け入れを拒否する必死の運動が、原発の立地や運転と闘う血の滲むような地域住民運動と並行して続けられているのです。それはフクシマの事故以前から大問題でしたが、一般の人びとの目からは隠されていました。
 フクシマの事故はわたしたちを放射性廃棄物のアポリア(難問)に否応なく直面させる出来事でした。否、フクシマの事故による放射能汚染物と廃炉自体が、目に見える巨大な放射性廃棄物として、いまそこにある危機として存在しています。フクシマの事故に関する本はたくさん出ていますが、この事故を放射性廃棄物の観点から考察するのは本書が最初の試みです。本書を1つの導きの糸として、放射性廃棄物のアポリアを考えるきっかけになればと願います。

 本書の「あとがき」の末尾で注意を喚起しましたが、ドイツのヨアヒム・チルナー監督のドキュメンタリー映画『イエローケーキ~クリーンなエネルギーという嘘』(配給:パンドラ)は、人形峠の何十何百何千何万倍ものウラン残土やウラン鉱さいが世界のウラン採掘地に投げ捨てられ、これら始末に負えない膨大な放射性廃棄物が手もつけられず茫漠と広がっている姿をわたしたちに突きつけています。原子力開発は「入り口から出口まで放射能タレれ流し」「あとは野となれ山となれ」を最後の言葉としているのです。