意見表明

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エネルギー・環境に関する意見聴取会

        日時:2012年8月23日
        場所:鳥取県倉吉市の倉吉未来中心
        主催:とっとり・市民


        1、政府担当者の説明 
          加藤聖(環境省低炭素社会推進室室長補佐 兼 内閣官房国家戦略室併任)
        2、市民からの意見表明
          土光均(さよなら島根原発ネットワーク)
          荒田鉄二(NPO法人KIESS・鳥取環境大学)
          土井淑平(ウラン残土市民会議)
        3、出席者の意見

 

 

 

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                                  (えねみら・とっとりのHPより)

 


=意見表明=

「エネルギー・環境・核廃棄物」

         ウラン残土市民会議 土井淑平

 

 エネルギーと環境の選択について、いろいろ論点はあると思いますが、わたしは廃棄物という観点、ここでは放射性廃棄物の観点から、意見を申し上げます。

 

1 原発が生み出したエネルギーと死の灰

 まず、原発が生み出すエネルギーと放射性廃棄物たる死に灰の関係を見たいと思います。
 表は京大原子炉実験所の小出裕章さんの本から取ったものですが、おととし2010年10月現在のデータです。
 いま廃炉になっている福島第一原発の4基も含めて、54基4800キロワットの原発が動き、毎年、広島原爆5万発分の死の灰つまり核分裂生成物を生み出している勘定です。
 表の左側が累積発電量(兆キロワット時)、右側が核分裂生成物の累積生成量(広島原爆の何万発分か)を示します。
 これで見ますと、日本の原発の累積発電量は約6兆キロワット時を超えますが、その一方で広島原爆110万発を超える死の灰つまり核分裂生成物を生み出していることが分かります。
 小出裕章さんの試算では、セシウム137の減衰を考えても、日本人150人で広島原爆1発分の負担です。
 これをいったいどう始末するのか。このことをエネルギーと環境の選択肢に入れないと、木を見て森を見ない議論になります。

 

2 人形峠のウラン残土の堆積量と放射線量

 つぎに、放射性廃棄物について見ていきます。
 放射性廃棄物は大きく低レベルと高レベルの2つに分けるのが普通ですが、わたしはきょうこの会場にもきている市民グループの仲間とともに、人形峠のウラン残土問題に20年以上取り組んできました。
 そもそも原子力開発の入口のウラン採掘の段階で、膨大な始末におえない膨大なウラン残土とウラン鉱滓が出ていることに注意を喚起したいと思います。
 ウラン残土は100万キロ級の原発の約半年分の燃料しか得られなかった人形峠周辺で、表にあるように何と総計45万立方メートルにのぼります。
 これは200リットル・ドラム缶に換算して225万分で、日本の低レベル放射性廃棄物の累積総量約100万本の2倍以上に相当します。
 当然、ウラン残土堆積場の環境は汚染されています。わたしたちは小出裕章さんとともに、ウラン残土堆積場の環境汚染の実態を調査しました。
 わたしたちが集中的調査で汚染の実態を明らかにした鳥取県湯梨浜町の方面(かたも)地区は、ウラン残土の撤去を要求し、何と18年の歳月をかけ、最後には訴訟に訴えて、残土の一部の撤去を実現しました。
 いま見たのは使い物にならなかった人形峠のウラン鉱山跡地のデータですが、ことし日本で公開され鳥取と倉吉でも上映した映画『イエロー・ケーキ』を見ると、 日本がウランを輸入しているオーストラリア、カナダ、ナミビアなど世界のウラン採掘地には、人形峠の何百何千何万倍ものウラン残土のボタ山、そして、より厄介は生物の死に絶え たウラン鉱滓の死の湖が、いくつもいくつも連なって茫漠と広がっています。
 つまり、地球汚染です。わたしたちは日本がウランを輸入し続ける限り、地球汚染の倫理を問われます。

 

3 福島第一原発の廃炉の工程表

 政府は昨年末に福島第一原発の事故炉を廃炉にする工程表を発表しました。
 表に掲げたように、2年後の2013年までに、使用済み燃料プールから核燃料の取り出し開始、10年後の2021年までに、原子炉から溶けた核燃料の取り出し開始、30~40年後の2041~2051年までに建屋解体、という工程表になっています。
 この工程表通りにコトが進むかどうかはさておき、30~40年でフクシマの廃炉処理が終わると考えてはなりません。とんでもない。
 よろしいですか。高レベル放射性廃棄物の毒性は10万年の単位で考えなければならない、というのが各国の政府や原子力当局の相場です。数十年ではなく、10万年です。これがフクシマの負の遺産です。
 ところが、アメリカの原子力規制委員会は、高レベル放射性廃棄物の毒性の持続は10万年ではない、100万年の単位で考慮しなければならない、と言っているのです。
 それでは、いったい、この10万年ないしは100万年も毒性が持続する使用済み燃料ないしは高レベル放射性廃棄物を、誰が、どこで、いかに処理し管理するのでしょうか。ハッキリ申して完全にお手上げです。
 このことを考えただけでも、原発はエネルギー以前の廃棄物の管理という観点から、自ずから絶対にダメでアウトだという結論が出てくるはずです。

 

4 使用済み燃料の貯蔵量と貯蔵容量

 念のため、原子力資料情報室の表から、日本の原発から出た使用済み燃料の貯蔵量と貯蔵容量を見ておきましょう。
 電卓ではじいてみると、各原発の使用済み燃料も六ヶ所村に移送された使用済み燃料も、貯蔵量は貯蔵容量のほぼ3分の2ですから、残る容量は3分の1ということになります。
 しかし、原発の運転が続く限り、いずれ満杯になることは、目に見えています。げんに、個々の原発の使用済み燃料プールは、福島第一原発で87%、柏崎刈羽原発で75%、と満杯に近づいているのです。
 そこで、電力会社は中間貯蔵施設の建設を各地で計画しています。さきほど環境省の方も言われましたように、政府も使用済み燃料の扱いをめぐって、①直接地中処分②再処理③両者の併用、の3つの選択肢を検討していますが、いずれを取ってもお先真っ暗です。
 つまり、核のゴミならぬ核の毒は、完全に糞詰まりです。これこそ、多少のエネルギーを生むからといって、原発を続けてはならない決定的な論点です。

 

5 地球の年代記と高レベル放射性廃棄物の将来

 最後に、ダメを押します。
 さきに、福島第一原発の廃炉の工程表を取り上げたさいにも申しましたが、使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物は、10万年ないしは100万年の管理が必要です。
 表に示した地球の年代記を見て下さい。10万年前といえば、旧人のネアンデルタール人がまだ生存し、現生人類のホモ・サピエンスが登場した時代です。100万年前といえば、原人のピテカントロプスやシナントロプスの時代です。
 たとえば、ネアンデルタール人やピテカントロプスに、「申し訳ないが、高レベルの毒を10万年、10万年預かってくれないか」と言えますか。
 これはもう白昼夢の世界です。あるいは、未来小説か空想科学小説の世界です。人類の生存もあやしいのに、まともな科学的判断も対策も講じられるわけがないではありませんか。
 表に注記したように、動燃 ― 現在の日本原子力研究開発機構は、たった30年前のウラン残土のあと始末もしなかった。
 方面地区自治会とウラン残土の撤去協定書を結びながら、その履行をズルズル引き延ばして、18年もかかったのです。これは論より証拠です。


結び

 わたしはきょう廃棄物という観点にしぼって、原発は直ちに廃止すべきだと主張しました。
 原発を推進する人たちは、結局、〝あとは野となれ山となれ〟〝われ亡きあとに洪水は来たれ〟、という無責任に行き着かざるを得ません。
 フクシマの大惨事の責任を誰も取らず、大飯原発を再稼働させた政府・当局と電力会社の姿は、太平洋戦争末期の日本の為政者たちとウリ二つです。
 もう真っ赤なウソで塗り固めた原発の大本営発表 ― 原発の大本営発表は止めにしましょうではありませんか。