原子力マフィア -最新の状況と資料を踏まえて-

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日時:2012年1月31日(火)19:00~21:00
場所:西神田コスモス館 (東京・西神田)
主催:ユニオン東京合同

 

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                        司会の三角忠(左)と土井淑平(右)

 

 

講演目次

 

  序 福島県の双葉町長に避難先の埼玉県加須市で会う
  1 日本は脱原発の前夜の電力事情だが…
  2 原発の再稼働と輸出をもくろむ野田政権
  3 メルトダウン状態の日本の政治と社会
  4 七角形ないしは八角形の原子力マフィア(1)
  5 七角形ないしは八角形の原子力マフィア(2)
  6 A級戦犯の戦後思想家としての吉本隆明
  7 吉本隆明にブラ下がるダラシない日本の言論人
  8 原発の宣伝に駆り出された御用学者・マスコミ・文化人・芸能人
  結び 原発は入口から出口まで放射能のタレ流し

 

 

 

原子力マフィア -最新の状況と資料を踏まえて-

 

序 福島県の双葉町長に避難先の埼玉県加須市で会う

 

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          避難先の埼玉県加須市の双葉町役場で井戸川克隆町長(右)と会う土井淑平(左)


 鳥取からまいりました土井と申します。
 実は、渋谷のアップリンクで『イエロー・ケーキ ~ クリーンなエネルギーという嘘』という映画をロードショーで上映しておりまして、この劇場公開に先立って今月23日に監督とわたしと出席しまして、自由報道協会で記者会見を開きました。この『イエロー・ケーキ』のパンフレットに、わたしも「人形峠ウラン残土の現在」というのを書いております。きのうはちょうど その劇場公開の最中幕間に、人形峠のことをちょっと話してほしいということで来ました。
 鳥取は実は30センチくらい雪が降っておりまして、はたして12時までに来れるかなあと心配していましたところ、こちらに着いてみますとカラッと晴れている、ということで間に合いました。
 まあ、皆様もご存知と思いますけど、野田首相が昨年暮れに福島第一原発事故の事故収束宣言を出しました。これはとんでもないことでして、結局、フクシマをもみ消そうとするもみ消し宣言です。わたしはまずこの野田首相の事故収束宣言は、いまも非常に苦しい中で避難生活を送っておられます、フクシマの住民や県民の皆様に対する冒涜だと思います。
げんに、国には協調姿勢を取っています佐藤雄平知事が、「避難民が帰還できて収束だ」とそういう不快感を表明されています。さらに、現在、埼玉県の加須市というところに役場ごと避難をしています双葉町 ― これはもう原発の地元です ― の井戸川克隆町長は、『東京新聞』に寄せた手記で、「とんでもないことと思う。私は認めるわけにはいかない。政府はうそをついている。事故は終わっていない」(『東京新聞』2012年1月6日)、と怒りを表わされています。
 実は、わたし、きょう午前中にその加須市の双葉町長のところを訪ねてまいりました。ちょっと田舎者で高崎線の鴻巣駅に着いて、役場のクルマで迎えてもらうというところが、とんでもないことで宇都宮線に乗っちゃいまして、あわてて町長に電話しましたところ、じゃあ急がなくていいからと言って、また行く手順を教えていただきまして、べつの駅までまた迎えにまた来てもらった、とそういういきさつもありました。
 福島県の双葉郡内に中間貯蔵施設の建設をいま政府が計画しております。これに対しても、双葉町の井戸川町長は怒っておりましてね。先日、神奈川(横浜)かな脱原発世界会議というのがでありまして、この世界会議のあとインタビューを受けて、それがユーチューブに乗っております。わたしも見ました。
 そのなかで、井戸川町長は「自分も原発を誘致した共同責任がある」、とそのことをはっきり認めたうえで、しかし東電の責任が明らかにならないままに、中間貯蔵施設なんていうことはあり得ん、と。そのさいに、人形峠のウラン残土問題にこと寄せまして、人形峠の加害者である日本原子力研究開発機構がフクシマの事故処理をすることはわたしは認めない、とそういっておられる。
 わたしはその人形峠の問題に20年以上かかわってまいりまして、この言葉は本当に「よくぞ言って下さいました」、ときょうも申し上げてきましたけど、まさにその通りなんで、人形峠(の事業者)はかつて動燃といってました。動燃つまり動力炉・核燃料開発事業団。「どうねんはどうなってんねん」、と世間のごうごうたる非難のもとに、名前を変えたんですよ、やりきれなくて。名前を変えて、さらにもういっぺん名前を変えて、きょう日本原子力研究開発機構ですけど。
 その日本原子力研究開発機構は人形峠周辺のウラン開発で ― これはもう1950年代の末から60年代の初めにかけてです。なんとウランを採掘した膨大な放射性の残土(つまり)ウラン残土を45万立方メートル、人形峠周辺の12地区のウラン鉱山跡地に放置しているんです。
 しかも、鳥取県側の湯梨浜町方面(かたも)地区という20世帯くらいの小さな村がね、立ち上がって撤去を要求しまして ― ウラン残土の放置が発覚したのは1988年ですけど、1990年に撤去協定を結びました。それは45万立方メートルのうち、方面地区には1万6000立方メートルですけど、そのうちの放射線量の高い「ウラン鉱帯部分」つまり鉱脈の部分を取りますという協定書です。
 ところが、この協定書を結びながらまたね、旧動燃はズルズルズルズルと引き延ばし先延ばしてきました。これ一つは岡山県が反対していということで、この問題は鳥取県と岡山県のあいだで〝核のゴミ戦争〟が起きました。鳥取県内の自治体と自治会のあいだでも〝核のゴミ戦争〟が起きました。実に、わたし数え上げましたら8回、もう〝七転び八起き〟、8回にわたる〝核のゴミ戦争〟が起きているんです。たった3000立方メートルのあと始末に。
 ですから、フクシマの事故で膨大な残土・ガレキ・焼却灰等が出ていますし、福島原発の廃炉のあと始末を考えますと、これはとてつもないことだとわたしは実感しているわけです。まあ、そういうこともありまして、きょう加須市を訪ねて双葉町長と会ってきました。
 双葉町長は「国にも事故の責任がある」ということをはっきりいっておられます。きょう(双葉町に)行ったあと、経済産業省で請願権を行使して請願書を出しましたけど、経済産業省というのはかつて通産省といっていました。ウラン残土の監督官庁は ― まず、旧動燃いまの日本原子力研究開発機構の監督官庁は科学技術省です。現在、文部科学省の管轄に入っています。それから、鉱山の監督官庁は通産省、いまの経済産業省です。
 これらの監督官庁は監督責任どころか、事業者と一体で ― つまり、プレイヤーとレフェリーが一体で、人形峠のウラン残土をもみ消してきた、という事実がある。おなじことがもっと巨大なフクシマの事故のあと始末で起きようとしている。フクシマの事故をもみ消そうとしている。だから、双葉町長も怒っている。まあ、そのようないきさつがあります。

 

1 日本は脱原発の前夜の電力事情だが …


  さて、これから、このあいだ出しました『原子力マフィア 原発利権に群がる人びと』(編集工房朔発行、星雲社発売2011年)という本をテキストにしながら、これをもとにしながら、ちょっと新しい事実や状況も踏まえまして、お話させていただきたいと思います。
 いま、日本に54基の原発があります。そのうち動いているのは何と3基です。これは(東日本大震災)やトラブルや定期点検等で現在動いているのは3基です。4月中にはこの3基とも定期検査で止まります。つまりゼロになるんです。つまり日本は原発なしでも十分やっていける、これは1つの証拠です。
 ところが、やはりこれに危機感を抱きました政府当局あるいは原子力産業は大変な巻き返しをはかろうとしています。つい最近、経済産業省が(関西電力の)大飯原発3号機と4号機のストレステストの1次評価を妥当であるという意見を出して、いま専門家会議にかけています。
 そして、皆様も新聞報道あるいはテレビの報道で見られたかも知れませんが、IAEA(国際原子力機関)が大飯の原発の調査に入りました。わたしは「原子力マフィア」というタイトルでいうわけじゃありませんけど、IAEAこそ原子力マフィアの総本山 ― 世界の総本山です。ですから、IAEAが再稼働もОKだというのをバックにして、それをバネにして、再稼働に踏み切ろうとしている、そのように考えております。
 現在、さきにいいましたように、たった3基でも(日本の電力は)持つ。実は、日本の電力の設備容量を見ますと、実際に原発を全部止めても十分余裕があるんです。これはデータとしてあります。十分まかなえる。たとえば、『エネルギー白書2010』で見ると、たしかに発電の実績は火力が62パーセント、原子力が29パーセント、水力が8パーセント、新エネルギー等が1パーセントです。
 つまり、原子力は全体のたしかに3割を占めています。これは実は政府当局が原子力の依存を人為的に制度的に高めるために、使える火力・水力を遊ばせて、そうして原子力を動かしてきた、そういう実態なんです。そのまた半面で自然エネルギーの開発をまったくやってこなかった。
 それで、原発がなくても発電設備の容量が十分あるというのは、官庁統計でもはっきり出てくる。ちょっと数字がややこしいかも知れませんけど、全国の発電設備は2億8172万キロワット、ここから原発の54基の設備容量4896万キロワットを引くと、2億3276万キロワット余裕があるんです。
 つまり、日本の設備容量から原発を抜いたそれでも最大電力(2010年で1億7775万キロワット)が十分まかなえるというデータが実際あるんです。これねえ、官庁統計で出てくる、調べれば。それをまったく皆さん新聞で目にされたことない。わたしはマスコミが本当に何にしているんだといいたい。それはおそらくマスコミが経済産業省寄りだからです。
 ところで、自然エネルギーは日本はたった1パーセント。ところが、ドイツは2010年に自然エネルギーは17パーセント、そして、2020年には40パーセントにするといっています。ドイツは今回の福島第一原発事故のあとに脱原発を政府が決めました。これはとりあえず古い原発の8基を停止してそのまま閉鎖、残りの9基を2022年までに廃炉にするとの決定です。
 さっきに申しましたように、これは自然エネルギーをずっと育成してきたというバックももちろんありますけど、逆に日本が自然エネルギーをまったく抑圧して、原子力の比重を人為的に高めてきたのと裏腹です。また、ドイツ政府だけじゃなくて、スイス政府も脱原発を決定したことも、皆様新聞で見られたかと思いますけど、イタリアのベルルスコーニ政権は国民投票で原発の再開を目論んでいたんです。ところが、フクシマの事故の衝撃がありまして、国民投票をやってみましたら95パーセントと圧倒的に再開を否定する、そういう結果になったんです。
 でうから、ヨーロッパの動きを見ますと、フクシマの地元の日本は、本当にどこよりもダメだと思わざるを得ない。日本は脱原発の前夜なのに、そうならない。それは政府当局と電力会社が、原発を国策として押し進めているからだ、と考えざるを得ません。
 昔、ルイ14世というフランスの国王が、「朕は国家なり」といいましたけど、わたしは日本の政府は「原発は国家なり」、そう考えているといわざるを得ない。これから、「原発は国家なり」の「原子力マフィア」の植民地のような日本の状況を少し話してみたいと思います。

 

2 原発の再稼働と輸出をもくろむ野田政権


 福島第一原発事故から1年明けた新年早々に、野田政権の原発再稼働と輸出に向けた動きが非常に加速されています。
 さっき申しましたように、関西電力の大飯原発3号機と4号機のストレステストの1次評価は妥当である、と経済産業省がそのような意見を専門家会議に出しました。ところで、この専門家会議の委員を見ますと、たとえば東京大学の岡本幸司教授、大阪大学の山口彰教授、(筑波大学の阿部豊教授)の3人は、原子力産業から資金を得ていたんです。それははっきり分かっています。
 つまり、原子力産業から資金を得た者が、ストレステストをチェックするなんて、とんでもない。本来、レフェリーであるはずの者が、プレイヤーと一緒になって、連携プレーをしている。日本の原子力行政の最大の問題の1つはこれなんです。プレイヤーとレフェリーが一体である。
 これはかつて、あるいはずっと以前から、亡くなられましたけど、高木仁三郎さんがいってこられたことなんです。だから、たとえば、経済産業省のなかに原発を推進する資源エネルギー庁があり、原発の安全性をチェックする原子力安全・保安院がある。推進役とチェック役の両方、経済産業省のなかにある、そのような構造なんです。
 やがてゼロになる原発を再稼働させようという必死の巻き返しがいま起きている。と同時に、野田政権は原発の輸出を進めようとしています。これは野田以前の菅直人の政権の時代から、民主党政権がこぞって進めようとしてきたものでして、原発の輸出を昨年の国連の演説だったか、野田が「原発の安全性を世界最高水準に高める」なんということをいいながら、原発の輸出と再稼働を表明したんです。
 日本の「原発の安全性を世界最高水準に高める」!これはねえ、皆さん。これはジョークとしかいいようがないでしょう。だって、皆さんの目の前でガタガタボロボロのね、すざまじい残骸をさらした事故炉があるわけです。これはもう皆さんも新聞やテレビで見ているでしょうし、世界が注目して見てるんですよ。そんなガタガタボロボロの原発を輸出するなんて、これは本当にブラック・ジョークとしかいいようがない。
 わたしは売る方も売る方だけど、買う方も買う方だと思います。これはいってみれば、「カラスは白い」といっているようなもんです。あるいは、「三角形は丸い」といってるようなもんです。本当に子どもでも分かるような、詐欺まがいの商法だ。
 冒頭にちょっと申しましたように、野田政権の細野豪志環境相兼原子力行政相が昨年の暮れに、(福島県)双葉郡に中間貯蔵施設をつくるような申し入れをしました。新年明け野田首相が直接出向いて、さらにこれを押し込もうとした。しかし、さっきいいましたように、双葉町長はこれを断固として拒否しております。そのような状況がある。
 また、つい最近、細野環境相兼原子力行政相は1月6日の会見ですけど、原子炉等規制法を見直して(原発の)運転期間を法的に確定する、なあーんていって原則40年だと ― ただし例外的な延長もあると。その例外的な延長について、政府は20年だといっている。 つまり、60年 ― 最長60年運転。これは結局、もう現状維持 ― 現状維持というよりも、むしろ現状よりも悪い。
 なぜなら、現状は30年経った原発は老朽原発として、その安全性を確認して10年ごとの運転継続をチェックしていく。ところが、もう法律で40年を認めたうえで、〝抜け穴〟の20年まで認めるという政府決定をこのあいだしました。もうこれはわたしは〝ノーズロ〟だというんです。
 皆さん、ちょっと〝ノーズロ〟という言葉は分かりにくいでしょうが、わたしのような年配の者は分かるんです。〝ノーズロ〟というのは〝ノーズロース〟です。〝ズロース〟というのはね、ご婦人がはいていた下着です。ですから、もう民主党政権は〝ノーズロ〟だと、どうにもならんという風に考えざるを得ない。
 こんな風にね、民主党の政権、為政者たち、あるいは、原子力産業界が前のめりに突っ走っていますけど、本当にわたしはこの本『原子力マフィア』のオビに出てきます、「フクシマを返せ!」といいたい。「フクシマを返せ!」と。「なにいってんだ」といいたい。

 

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               経済産業省前のテント村を訪れる(2012年1月31日)

 

3 メルトダウン状態の日本の政治と社会


 自民党の一党独裁から民主党に転換して、多くの国民がこれで日本の政治も多少変わるだろうと思ったと思います。なにしろ、1955年いらい半世紀以上、自民党の一党支配が続いていました。ところが、フタを開けてみますと、みなさんもご存知にように、まあ〝手袋の裏も手袋〟なわけなんです。手袋の裏を使っているにすぎません。民主党は。ですから、〝第2自民党〟であるといっていい。しかも、〝第2自民党〟も、だいぶボロボロになっている自民党の手袋の裏である。
 この本でもわたし書きましたけど、いまの日本の政治状況は戦前の大政翼賛会の前夜である。大政翼賛会というのは太平洋戦争下で、その戦争を進めるためにすべての政党が合意して、そのなかにはたとえば産業・農業・商業・海運・婦人・青少年それらの諸団体もまとめて、翼賛体制ができた。それが大政翼賛会という運動に合流していくんですけど、この 日本の原子力マフィアと呼んでいるものは、太平洋戦争下の大政翼賛会の新版である、もう実は新大政翼賛会のような状況である、といわざるを得ない。
 たとえば、この本『原子力産業』で72ページに挙げておりますけど、表4に「超党派の『地下原発議連』のメンバー」の一覧表を挙げています。「地下原発議連」? ― 何でしょう。いや、どうもいまの原発はヤバイから、地下につくればいいんじゃないか、というのが地下原発なんです。
 それで、その顔ぶれを見ますと、もう驚くことに、会長がたちあがれ日本の平沼赳夫、顧問に自民党の谷垣禎一、安部晋三、森嘉朗、民主党の鳩山由紀夫、渡部恒三、国民新党の亀井静香も入っています。これが出されたのが、何と去年の菅内閣に対する不信任決議案の国会提出の直前、昨年の5月31日です。つまり、超党派で菅を引きずり降ろして、原発を推進しようという、わたしは地下運動だと見ました。そのような動きがありました。
 これはもう原発だけじゃなくて、沖縄の基地をめぐる状況もそうでして、普天間の移設先は少なくとも県外だといっていた民主党の鳩山由紀夫が、アメリカに一喝されましたらグニャグニャグニャと潰れちゃいましてね。グニャグニャというかフニャフニャですね。さらに菅直人もそれから現在の野田佳彦も、まるで植民地の属国の総督のように受け継いでいる。これはアメリカの言いなりのロボットのように、自民党時代の辺野古移設案を進めようとしている。
 新年明けてからだっと思いますけど、防衛省の田中聡という沖縄防衛局長が、「犯す前にこれから犯すとは言わない」と言いましたよね。その発言がもとになって更迭されました。内閣の一部改造も行われた。しかし、わたしはこの発言の追求をマスコミも含めて見ておりましてね、これは“木を見て森を見ない”カラ騒ぎだと(思いました)。
 なぜなら、この発言は沖縄を本当にレイプしようとしている野田政権と防衛省の本音を ― あるいは本性を本当に現したものであって、この発言をした田中聡が悪いわけじゃない。政権自身がそうです。げんに、野田首相はアメリカのオバマ大統領に媚びへつらって、辺野古移設に向けた環境影響評価なるものアセメントを昨年末に、こっそり夜陰に乗じて(沖縄県に)出しましたよね。これはもう本当に、政府自身が「犯す前に犯す」といわずに、「沖縄を犯した」行為だとわたしは思っています。
 結局、原発と沖縄基地の問題を見ますと、本当にこの民主党と自民党の2大政権というか2大政党が、まったくおなじである。より劣化している。ボロボロになってきている。そのようにみたくなる。
 もう一つ、ついでにいいますと、TPP ― 環太平洋経済連携協定ですけど、これも民主党政権は進めようとしている。菅直人が ― 市民運動出身といいますけど、わたしはもともとから議員運動出身だといってますけど ― 「平成の開国」だなんてこのTPPを進めようとした。「平成の開国」?お笑い草ですよ。これは「平成の開国」じゃなくて「平成の属国化」です。
 アメリカの主導のTPPに乗ろうとしているこの動きは、ずっと以前からいわゆる新自由主義といわれる ― 新自由主義のグローバリズム、および、アメリカのドル基軸通貨体制 ― これが基盤にありまして、財界の応援団と化してTPPを政府もマスコミも持ち上げている。
 新自由主義のグローバリズムは、この皆様のユニオンもご苦労なさっている労働問題にも密接にかかわっています。小泉改革を通しまして、非正規雇用・派遣労働者・臨時労働者・パート等が非常に拡大しておりまして、労働者の権利がいちじるしく侵害されています。
 さて、原発に戻りますけど、「平成の属国化」は福島第一原発事故直後の日本政府の対応にもはっきり現われております。菅直人の民主党政権下で、文部科学省はSPEEDI ― これは「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」というややこしい名前のSPEEDIの試算結果を、肝心の地元のフクシマの自治体に通報しないで ― 通報しないわけですから、フクシマの住民を被ばくしております ― これを何と米軍とアメリカ政府には外務省を通していち早く提供している。スピーディなんです。たしかに、文字通り。 
 しかし、フクシマの住民や自治体に対しては、ノロマーディだと。これは本当に日本の政府の ― フクシマの民衆を見殺しにしている日本の、アメリカの属国化した政府の正体をよく現わしている、とわたしは思います。象徴的な出来事だと思います。
 それから、わたしはフクシマの事故が起きたあとに、ヨウ素剤は配られているのか非常に不思議に思って、新聞やニュースをフォローしましたけど、何の報道もない。(原発の)大事故が起きますと、放射性のヨウ素が飛んできます。その放射性のヨウ素の影響を防ぐためにヨウ素剤を飲む。とくに子どもたちは放射性のヨウ素によって甲状腺をやられます。甲状腺ガンや甲状腺障害が発生しますので、ただちにヨウ素剤を配って子どもに飲ませる必要がある。
 ところが、フクシマ事故でヨウ素剤が配布されていなかった。これまったく報道されないのも不思議なんだけど、どうなっていると少なくとも取り上げるべきだったと思うんだけど、配布してないから報道しませんでしたということかも知れないけど、それはちょっとマスコミが責任を怠っています。ヨウ素剤はどうなっている、配っているか、と追及すべき問題だった。このヨウ素剤の配布をしないことによって、子どもたちの甲状腺被ばくが非常に拡大したと思います。これからその影響が出てくると思う。
 そればかりではなくて、皆さんも最近の報道で見られたと思うだけど、福島第一原発事故によって放射性物質が大量に放出されました。この放射性物質の大量放出なかんずくセシウムの放出は、京大原子炉実験所の小出裕章さんによりますと、汚染範囲は東北の宮城県から岩手、福島、栃木、群馬、埼玉、東京、茨城、千葉と広大な範囲に広がっていまして、日本の法令によると(管理区域に)規制しないといけない、そのような汚染が広がっている。それは大体250キロぐらい、つまり長野県と群馬県の県境くらいまで広がっている。こういう汚染の実態も住民たちに伝わっていない。
 のみならず、本来なら(管理区域として)規制しないといけない。チェルノブイリの事故でセシウムの汚染が大体600キロから700キロに及んでいました。それよりはやや範囲は狭い。まあ170キロとか250キロ、そこまで広がっているのに、その実態を十分に伝えていない。文部科学省はデータは持っています。一応、公開はしているけど、これが何を意味するのか、それを明らかにしていません。
 それから、ごく最近の新聞で、菅直人の政権が昨年の3月25日の事故直後、内閣府の原子力委員会の近藤俊介委員長に作成させた文書がありまして、それは「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」というものです。これが最近暴露されて明るみに出ました。政府高官の1人は「ものすごい内容だったので、文書はなかったことにした」と語っています。べつの政府関係者は「文書が示された際、文書の存在自体を秘匿する選択肢が論じられた」といっています。つまり、意図的に隠していた。この不測事態シナリオはまさに東京を越えて、250キロぐらいまでに及ぶ、まあ東京圏内に及ぶというシナリオです。(『日本海新聞』2012年1月22日の「最悪シナリオ封印」、共同通信配信)。

 

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                             講演する土井淑平

 

4 七角形ないしは八角形の原子力マフィア(1)


 福島第一原発事故のあとに、新聞とか雑誌とかあるいは週刊紙なんかで、「原子力村」という言葉が登場しまして、これがクローズアップされるようになりました。「原子力村」という言葉は、1980年代の初めに原子力の業界誌に最初に登場したんです。それはべつに否定的な意味じゃなくて。ところが、この「原子力村」というのは閉鎖的で独善的だという否定的な意味で最初に使ったのは飯田哲也です。
 飯田哲也氏はもと原子力産業にいましたけど、その後転じまして脱原発を唱え、そして、とくに北欧の自然エネルギーを研究し紹介してきております。わたしは「原子力村」という言葉は妥当ではない、ちょっと牧歌的なニュアンスがある。だから、わたしは「原子力村」は「原子力マフィア」だと再定義して、言い換えて使っております。なぜなら、「原子力マフィア」とわたし呼ぶ巨大な産業・官庁等複合体は、ムラのような閉鎖的な小さなものじゃないわけです。
 それは産業・官庁・政府・議会・大学・マスコミ・労働組合を巻き込んでいるものです。だから、わたしはペンタゴンの五角形をもじって七角形だといって書いておりますけど、これを読みまして、わたしたちのウラン残土訴訟を支えてくれた弁護士から電話がありまして、「司法も入る、八角形じゃないですか」といいました。わたしもたしかにそうだと。
 たしかに、この『原子力マフィア』の61ページに、図1「原子力マフィアの相関図」というのを図で示しています。このなかにもちろん司法も入れております。しかし、文章のなかでは七角形だといいましたけど、たしかの八角形だといえる。司法も非常に重要で、重要な役割を果たしている。そのように思います。まさに、その司法はですね、たとえば原発訴訟をことごとく潰してきたのも、つまり行政の原子力推進を司法がバックアップしている。
 本来、行政のレフェリーであるはずですよね、司法は。ところが、レフェリーもプレーヤーと一体となって癒着している。それが日本の司法の姿です。司法でいいますと、原発訴訟もすべて敗訴です。
 ただ一つ勝利したのは、わたしたちがやりました人形峠のウラン鉱害裁判です。これはもちろん原発本体の訴訟ではない。原発の建設や運転の差し止めではなくて、日本原子力研究開発機構というのが動燃時代に結んだ、ウラン残土の撤去協定書を履行せよという、そういう訴訟です。これは1審でも2審でも(原告の方面自治会の主張が)認められ、最高裁に(被告の動燃を引き継いだ核燃料サイクル研究開発機構が)上告しましたけど、最高裁が却下しまして、つまり最高裁の最終決定で違法であるということで、このウラン残土訴訟は日本の原子力関連訴訟で唯一の勝訴の事例です。
 そのような行政と司法が癒着しているという構造 ― これは広くいいますと、日本の原子力産業と原子力行政は、プレーヤーとレフェリーが癒着し一体化している、そこに問題がある、という風にいわざるを得ません。
 この辺から原子力マフィアの説明に入ります。原子力マフィアはさっき七角形ないしは八角形といいましたけど、その原子力マフィアの中核には電力会社と原発プラントメーカーが座っております。今日の電力の9社が独占体制というのは、太平洋戦争下の国家総動員体制と戦時国家統制経済のまったくの産物なんです。その遺産として、9つの電力9社の独占体制がある。戦時下に国家による発送電部門の統合がありまして、また配電も統制するというかたちで、電力独占の原型ができております。
 ただ、わたしはこの本のなかで、ドイツや日本の原発はナチスと大本営の亡霊だといってますけどね。ドイツの原発もそうです。(デンマークや)ドイツで活動している活動家(ウルリヒ・ヨヒムセン)が、ドイツの原発はナチスの亡霊だといっています。
 この電力独占というものが実は巨大な利権を抱えております。電力会社の利益の源泉はレートベース(による総括原価方式)と呼ばれるものでして、これ(総括原価)は固定資産・建設中の資産・核燃料などレートベースに一定の(報酬)率をかけたもの(です)。 最初は8パーセントでした。この本では8パーセントとしていますけど、その後数字が変わってきていまして、これはちょっと訂正しないといけません。
 現在は(報酬率は)3~3.3パーセントですけど、何といっても原発(の建設費)は1基数千億円ですから、これにレートベースがかかると、それがレートベースかける最初は8パーセント、現在は3あるいは3~3.3パーセントが、利益として事前に組み込んで電気料金で請求してもいい、という法律なんです。
 ですから、これはもう皆さんも分かるように、パイを大きくすればその利益も上がるわけで、小さいのをこちょこちょつくたってダメなんで、巨大な原発を大伽藍でつくって、それでレートベースの8パーセントあるいは3・3パーセントの利益を得ている。たとえば、核燃料なんかはべつにまだ購入してなくても、契約しただけでもう(レートベースの)利益に計上してもいい。ですから、電力会社は原発建設に血眼になります。
 それから、もう一つ、電力会社と並んで原子力産業というか原子力マフィアの中核は、原発のプラントメーカーです。これもやはり戦前の財閥の復活と再結集の産物でして、三菱重工・東芝・日立これが御三家です。
 三菱・東芝・日立なんていうのは家電製品の大メーカーで、マーケットでもまあ人気商品で、何か平和な産業の代表のような顔をしておりますけど、実はとんでもない。これは原発メーカーの御三家であると同時に、日本の防衛産業の大手でもあるです。もう表向きの家電製品の裏側に、ダーティな原発と軍需産業、これが本当の顔です。
 この電力会社と原発プラントメーカーを囲みまして、日本のトップクラスの大手ゼネコン、大手鉄鋼メーカー、大手商社、大手銀行、大手生命保険会社、その他大手関連企業がぐるりと寄ってたかって取り囲んで原発を支えている。これが原子力マフィアの中核にあるものである。これらの原発関連産業も、子会社・下請け・孫請け等々群がって、まるで金魚のウンコのように連なっている。
 わたしはねえ、これはあとでいおうと思ってましたけど、金魚のウンコじゃあない。わたしはネス湖の怪獣ネッシーだと。あとでいいますように、たとえば日本の言論人や文化人や芸能人が、この原発の宣伝に群がっております。これわたしはネッシーだと。ネッシーっていうの、皆さんご存知ですかねえ。怪獣がネス湖で泳いでいるんじゃない。
 わたしかつて鹿児島にいましてね、池田湖という大きな池があります。ここでもネッシーが出るという騒ぎが出て、そうしてこれもまあ観光客を釣ろうという一環だったかも知れません。「池田湖のネッシー」だなんて。池田湖に行きますと、こんな大ウナギがおります。これも観光の名物、このくらいの太さで、1メーター数十センチほど。
 このネッシーというのは、何だと思いますか。これねえ小魚の群れなんです。小魚が群れてね、集団で群れて、こうしてうねって泳いでいる。それがネッシーに見えるんです。これがネッシーの正体なんです。
 ですから、原子力マフィアは、 原子力産業も、産業だけじゃない、(官庁も政府も)議会も大学もマスコミも労働組合も群がってね、ネッシーになって泳いでいる。これが原子力マフィアだと、わたしはまあいいたいわけです。
 この原子力産業を支える政財界としましては、やっぱり何といっても政界ではね、かつての読売の社主の正力松太郎と中曽根康弘、これが原発導入の先導役です。そして、田中角栄がそのあとを継いで道をつけた。田中角栄は1971年、新潟県の柏崎刈羽の原発建設予定地の売却利益約4億円を、(東京の)目白の私邸に運ばせているんです。これは(自民党)総裁選の資金源になっている。
 それから、政財界でいうと、財界もですね、わたしは行ったことはないけど、東京・大手町に経団連会館というのがあって、そこに経団連本部が入っています。ところがねえ、この経団連会館のなかに電力会社の事業団体である電気事業連合会も入っています。そして、東京電力の会長・社長は近年の勝俣恒久や清水正孝等も含めて、経団連の副会長それから電事連の会長、これを指定席として持っています。指定席のポストです。このように、東電のトップが財界の重鎮である。これがですねえ原子力マフィアの一番こわいところです。

 

5 七角形ないしは八角形の原子力マフィア(2)


 この原子力マフィアの中核にある電力会社と原発プラントメーカーの原子力産業を支えているのが、もちろん政府、官庁、議会、司法です。
 政府でいいますと、内閣府、経済産業省、文部科学省が中心です。とくに経済産業省と文部科学省は左大臣と右大臣だと思います。きょう行ってきました経済産業省は左大臣でありまして、去年の2011年度の予算でいいますと、1898億円の原子力予算を計上しております。経済産業省のなかには資源エネルギー庁、原子力安全・保安院、原子力安全基盤機構、総合資源エネルギー調査会等の原子力関連機構がありまして、これを抱え込んでいる。
 もう一つの右大臣 ― これが文部科学省でありまして、かつて科学技術庁と呼んでいたのもこの文部科学省に入ってますけど、その原子力予算は経済産業省より多くてね。去年2011年度の文部科学省の予算が2571億円で、経済産業省を上回っている。なぜか。これは、さっき以来いっている人形峠にもかかわっています日本原子力研究開発機構が、4000人の職員を抱えている。
 (文科省の)この4000人の職員を抱えている日本原子力研究開発機構を持っていますし、それからいま問題になっている高速増殖炉原型炉の「もんじゅ」も、この日本原子力研究開発機構が持っているものです。これはあとでいいますけどね、「もんじゅ」というのは、日本の核兵器生産の担保として、ずうと維持してきているものです。
 このような原子力官庁は、左大臣の経済産業省、右大臣の文部科学省、それから内閣府にも原子力委員会と原子力安全委員会があります。内閣府のなかの原子力委員会と原子力安全委員会も、推進機関と安全チェック機関が同居しているわけですから、まったくプレーヤーとレフェリーが一体のごちゃまぜの癒着構造だといわざるを得ない。
 これはさっきいっていますように、高木仁三郎さんが日本の原子力の恥部として暗部として指摘した、プレーヤーとレフェリーの一体という構造ですけ。これに加えて、さっきいいましたように、原子力産業や原子力官庁のチェック機構であるはずの司法まで、本来プレーヤーがレフェリーと一体となって動いている。
 司法でついでにいいますとね、そう言っても司法の人事までね、原子力産業や原子力官庁が手を入れることはないだろうと思いたいところですが、この本の85ページに指摘してますけど、伊方訴訟や福島第二原発の訴訟で住民側の請求を斥けた元最高裁判事の味村治は、なんと1998年に原発プラントメーカーの東芝の社外監査役に天下りしている。司法からですよ。とんでもない構造です。
 つぎに、まあ議会と政党と労働組合についていっておきますけど、はっきり申しまして電力会社と電力会社の労働組合が労使一体で原発を推進している。労使一体といいますのは、電力会社は自民党に献金する、労働組合の電力総連は民主党に献金する。それによって、両方で羽交いじめというより金縛りで、政党を縛っている。それが日本の原子力を推進する議会や政党の実態です。
 これはもう資金の流れでもはっきりしておりましてね。かつて自民党の政治資金団体は毎年数億円、電力会社9社から献金を受けておりました。その後、田中角栄の政治資金批判が表に出まして、1976年からは個人献金に変わりましたけど、つまり電力会社の役員やOBに個人で献金させるかたちですけど、これでもねえなんと2009年に4700万円も個人献金で自民党に提供しているんです。
 一方、労働組合はどうかといいますとね。電力総連という電力会社の労働組合 ― これは連合に入っております。連合の有力部隊です。ですから、連合も電力総連とおなじ動きをせざるを得ない。この電力総連は東電労組出身の(民主党の参院議員の)小林正夫に4000万円、それから関電労組出身の民主党の参院議員の藤原正司に3300万円の献金をしておりますし、そればかりではなく参議院選挙のたびに民主党の候補を推薦して、たとえば北澤俊美とか蓮舫とか輿石東ていうのかな、これらを当選させている推進力でもある。カネだけではなくて、電力総連はいわば原発推進の突撃隊ですから、まあナチスの突撃隊みたいなもんです、というと語弊があるかもしれないけど、突撃隊です。
 この本の131ページの表6に示していますけど、衆参合わせて40人近くの民主党議員が電力総連の「明日の環境とエネルギーを考える会」に出席しています。つまり、電力総連は「明日の環境とエネルギーを考える会」を開催して、民主党議員をいわば脅して、それに参加させて、背後から原発推進の圧力をかけている。そのなかには、女川原発を抱える宮城県出身の安住淳財務相や浜岡原発を抱える静岡県出身の細野豪志環境相・原子力行政担当相も含まれます。
 それから、民主党は2010年に、「原子力政策・立地政策プロジェクト」を立ち上げております。これも71ページの表3「民主党の『原子力政策・立地政策プロジェクトチーム』」に挙げておりますように、平野博文を顧問として、川端達夫を座長とする、(旧)民社党系の議員がこのプロジェクトチームをつくっております。これこそ民主党の原発族の推進部隊だと思います。
 このように、電力会社と電力総連が労使一体で、自民党と民主党を金縛りにしているわけですから、2大政党は崩れないといけない、崩れてほしい、また崩れるでしょう。つまり、いまの政治状況にかかわりますけど、最近、たとえば維新の会とか、みんなの党、石原新党等が名乗りを上げようとしています。わたしはさっきいいました、原発推進で自民と民主を金縛りにしている、この自民と民主の2大政党は崩れるべきだと思うので、そういうかなりいかがわしい政党ではあるけれども、ともかく政党の多党化と流動化が起こってほしいと思います。
 ともかく、いまの自民と民主の2大政党は崩れないといけない。多党化と流動化が起こって、原発についても沖縄基地についても、いろんな議論が出ないと本来はおかしい。大体、2つの選択肢しかないというのはおかしいし、その2つも結局1つなわけですから、これじゃあ選択肢がない。わたしは議会政治、政党政治には非常に否定的なんだけど、政党政治の枠内で考えてもそう思っております。
 まあ、どれもこれもさっきいったように、いかがわしい、ないしは出来が悪い。たとえば、維新の会の橋本は労働組合を敵視していますし、教育思想も右翼でこれは石原新太郎と似たところもある。それでもねえ、たとえば橋本・石原が発送電分離を株主総会に提案するという。大株主なんです、東京都と大阪市は。わたしはこれはいいことだと思う。大いに提案してほしい。そして、発送電を分離して、電力独占を解体しないといけない、そう思ってますから。つまり、戦前の大政翼賛下でできたものは、いったんほぐして、自由な電力競争ができるようにしないといけない。

 

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                原子力マフィアに翼賛する言論人として吉本隆明を告発

 

6 A級戦犯の戦後思想家としての吉本隆明


 日本の議会政治・政党政治がこのように本当に腐り果てていますけど、マスコミも言論界も本当は情けない状況であります。きょう持ってきましたけど、ここにオークラ出版という出版社から『撃論』(オークラ出版、2011年)という本が出ています。これわたしは去年の秋に鳥取の書店で仕入れました。鳥取の小さな書店にも置いてあるということは、よほど資金を投入して押しこんだんでしょう。
 これどういうのかといいますとね。衆議院議員・町村信孝、元航空幕僚長・田母神俊雄、そして、吉本隆明等々が出てくるんです。たとえば、田母神のタイトルは「福島の放射能避難は〝平成の強制連行〟だ」といっている。強制連行だと、避難させるのはけしからん、といっている。吉本隆明は「吉本隆明が解剖する『〈脱原発〉という思想』」、とこういうインタビューを載せています。
 それからねえ、西村真吾という元衆議院議員が「沖縄戦を冒涜する大江健三郎は赤い祖国へ帰れ」なんて、これねえ本当にむかし戦争雑誌がありましたけど、戦争雑誌まがいの新右翼の雑誌です。こんな雑誌に、いまだに「戦後最大の思想家」といわれている吉本隆明が登場している。
 そして、さっき三角忠さんがいいましたように、ことし新年早々の『週刊新潮』(2012年1月5・12新年特大号の「「反原発」で猿になる!」)。これにもね、吉本隆明のインタビューが載っておりまして、「『吉本隆明』2時間インタビュー/『反原発』で猿になる!」。この『週刊新潮』のインタビューは、わたしの『原子力マフィア』の1つの衝撃(の結果)だと思います。
 『週刊新潮』は雑誌のなかでも電力会社の広告のトップの上位に入っています。ですから、当然こういうのを掲げるかも知れないと思いましたけど。それで、この『撃論』『週刊新潮』のなかでね ― あるいは、その前に、『毎日新聞』のインタビューも出ました。『日本経済新聞』にも出ました。わたし日経の記事は見てないんですけど、おんなじ口調です。
 しかも、わたしこの本のなかで書きましたけどね。『毎日新聞』のインタビューで、吉本隆明が足腰の衰えのため、客室に「四つんばいになって現われた」。こう書いてある。インタビューですよ。わたしがいってるんじゃないですよ。『毎日新聞』のインタビューで、記者が書いているんですよ。四つんばいになっても原発にしがみつく。そういう老醜をさらしているんですよねえ。吉本隆明は。これが「戦後最大の思想家」だなんて。
 吉本がいっていることはこういうことなんです。「科学技術に退歩はない」「原発をやめてしまえば、進歩がなくなる」(『毎日新聞』)。人類としての。いいですか。「原発をすぐやめてしまえというのは、人類としての発展、進化が止まってしまってもいいということにつながる」(『撃論』)。なんで原発が人類の発展・進歩になるんですか。誰が考えてもおかしい。そして、「人類が積み上げてきた科学の成果を一度の事故で放棄していいのか」(『週刊新潮』)、なーんていってる。まあね、本当に。
 そうそう、『週刊新潮』は電力会社と原発推進団体の広告を掲載しているランキングの第4位に入ります。福島事故のあとも、たとえば『週刊現代』は精力的に福島の事故を報道しました。批判的にも報道した。『週刊新潮』はそうじゃない。東電の批判は控え、そして、反原発の論客を批判する記事を出してきた週刊紙なんです。ですから、新年早々から、こういうのを出してもおかしくない。
 わたしはじつは吉本隆明につきましては、1986年のチェルノブイリの事故の直後に『反核・反原発・エコロジー ― 吉本隆明の政治思想批判 ― 』(批評社、1986年)という本を、サブタイトル「吉本隆明の政治思想批判」で出しているんです。わたしとしてはこれで吉本隆明については完膚なきまでに批判したんです。もういうこともないと思っていましたところ、またこんな反原発は猿だなんていうのが出てくるから、わたしもいわざるを得なくなって、それで『原子力マフィア』に1章設けまして、「A級戦犯の戦後思想家 ― 原子力業界のPRでピエロを演じ続ける吉本隆明」というのを書きました。
 「A級戦犯」というのはわたし以前にですね、佐高信が去年『原発文化人50人斬り』(毎日新聞社、2011年)という毎日新聞の本のなかで「A級戦犯」だと ― 吉本隆明と梅原猛は「A級戦犯」だと、こういっているんです。梅原猛はいま脱原発といってますけど、『原子力文化』(日本原子力文化振興財団)という原子力の広報誌に、インタビューで「原発は日本の神(神様)に似ている」、こんなインタビューを載せたんですよ。わたしはこの本のなかでこれも批判してますけど、それから吉本隆明の「原発を止めると人類の進化や文明に逆行する」、これは大ボラもいいところでね。
 なぜなら、原発なんていうのは大伽藍をつくっていますけど、実際にやっていることは湯沸かしなんですよ。核燃料を使って核分裂反応の熱で沸かす。ボイラー技術なんです。たんに。湯を沸かして、その蒸気でタービンを回す。それは火力発電も水力発電も原発もおんなじなんです。湯をわかすだけなんです。その湯を沸かすためにですね、1基数千億円の大伽藍を建て、しかも今回のフクシマのような始末におえない手におえないような事故まで起こしている。何やってんだということになるわけですよね。
 わたしはこの吉本隆明批判はたんなる批判じゃなくて、原発の科学論および科学技術論だと思っておりますんでね。原発はボイラー技術を破滅的にスケールアップしたものであって、むしろ科学技術という観点からは「退廃」である、「デカダンス」であるといっております。
 吉本隆明は東工大出身の技術系の人ですけど、「科学」や「技術」についてはね、本当に知識は小学生程度なんです。わたしホラでいってんじゃない。本当なんです。1986年に出した『反核・反原発・エコロジー ― 吉本隆明の政治思想批判 ― 』のなかでもいっとりますけどね。この『原子力マフィア』の152ページで、イラスト入りで出しております。これはもうイラストをつけないとちょっと分かりにくいかと思いましてね。こういうイラスト。これは「核廃棄物は宇宙空間へ」というイラストです。
 これはわたしが勝手にいったんじゃない。吉本隆明がいってることなんです。「核廃棄物は宇宙に廃棄すればいい」と。「ロケットで宇宙で処分可能だ」と。原理的にまったく問題はないと。いいですか、ロケットで核廃棄物を打ち上げる。その核廃棄物とくに高レベル廃棄物なんかは、子どもの背丈ぐらいで広島原爆の30発分(の放射能)が入っている。これをいっぱい詰めて、ロケットで打ちあげて、ロケットが爆発したらどうなりますか。げんにチェルノブイリの年に、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャーが爆発・墜落しました。
 ですから、そんな核廃棄物を詰めて、打ちあげて、事故を起こしたら、もう地球汚染である。本当に住めなくなる。それはそうでしょう。広島原爆の30発分が何千何百と入ったものが地球に落ちてきたら、地球住めなくなりますよ。そんなことをいってんですよ。東工大出身の(吉本隆明は)。わたしねえ、東工大はいったい何を教えているんだ、といってるんです。
 東工大の社会学の教授の橋爪大三郎なんてね。『永遠の吉本隆明』(洋泉社、2003年)なんて本を書いているんです。東工大というのはおかしい大学じゃないでしょうかね。こんなことが出てくるちゅうのは。わたしはべつに東工大を非難するためじゃなくて、東工大出身の吉本隆明や東工大の教授がね、おかしなことをいっているといいたいんです。(司会より「吉田義久さんも東工大出身です」、会場笑い)玉石混交ですね。要するに、子どもだましにSFアニメのようなもんですよね。

 

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                         吉本隆明を批判した最初の著書

 

8 吉本隆明にブラ下がるダラシない日本の言論人

  わたしがここでちょっとついでにいっておきたいのはね。吉本隆明は1960年安保闘争で反日共系の新左翼知識人ということで華々しくデユーしました。ところが、吉本隆明が原発についていっていることは、反日共系どころじゃない、わたしはこの本(『原子力マフィア』)のなかで「日本共産党さんそっくりだ」といっているんです。なぜなら、いま共産党もフクシマ以後、脱原発に舵を切りましたけど、(これまでは)原発は安全性を確保して推進するという立場だった。
 そして、わたしがこの『反核・反原発・エコロジー』を出しましたらね。共産党が『アカハタ』(日曜版)でわたしの本を写真入りで取り上げまして  ―  わたしの本と推薦文を書いた松下竜一を取り上げまして、「『反原発』は『反科学』だ、でたらめなことをいっている」と批判したんです。共産党が『アカハタ』(日曜版)で。まあ。わたしとしては逆宣伝で宣伝してもらったようなもんですけど、本当に。ところが、吉本隆明がおんなじことをいまいってんですよ、これでもこれでも、「反原発」は「反科学だ」だと。
 つまり、反日共系の新左翼知識人の吉本隆明がいっていることは、日本共産党さんそっくりどころじゃなくて、もう右翼がいっている新右翼がいっていることとおんなじです。 田母神(俊雄)と変わりませんよね。ここでいいたいのは、吉本隆明は原発だけじゃなくて、実は保守や右翼の大物や流行の寵児をどんどんどん担いではきたんです。たとえば、政治家では全盛期の小沢一郎、それから小泉純一郎、経済界では西武グループの堤清二やダイエーの中内功、宗教界ではオウム真理教の浅原彰晃を称賛してきた。
 浅原彰晃にいたっては、「世界有数の宗教家だ」「世界有数の思想家だ」と本当にいっているんですよ。本当ですよ。そういうことをいいながら、地下鉄サリン事件のあとも、絶対にその発言は撤回していません。もう吉本真理教ですから。オウム真理教のもじりじゃないけど、吉本真理教ですから、真理教の教祖が自分の発言をいちいち訂正しとったら、もうそれは権威がなくなりますんでね。自分がいったことは絶対訂正しない。他人がいったことはみんな「ニセモノだ」「擬制だ」という。
 わたしがここでいいたいのは、そういう吉本隆明がいったいいまどう扱われているか。あのねえ、某巨大都市の某巨大書店、まあ某大都市の某大書店、「現代思想」のコーナーにいきますと、「吉本隆明」というレベルを貼ったコーナーがあるんです。わたしは友人から聞いた。この正月に。昔じゃない。この正月ですよ。いまでもですよ。
 その吉本隆明のコーナーには、なんとナチス親衛隊じゃないけど吉本親衛隊の本がずらっと取り囲んでいる。20数冊。どういうのかといいますとね、これは吉本親衛隊のデモンストレーションみたいなもんですよね。梅原猛、中沢新一、江藤淳、岡井隆、蓮見重彦、糸井重里、森山公夫、芹沢俊介、山本哲二、高橋順一、宮本孝二、渡辺和晴、笠原芳光、北山修、清水徹、高岡健、絓秀美、田川建三 … など、たしか24人です。これが吉本隆明のコーナーにずらーとかれらの本が取り巻いている。いま現在ですよ。
 このなかで、たとえば梅原猛、中沢新一、江藤淳、岡井隆は、それぞれ一家を構えた文人なんで、吉本親衛隊とはわたしはいいませんけど。そのなかには、さっきいいましたように、かつて日本の原発を神様にたといえ、いま脱原発を唱えている梅原猛もいます。
 吉本隆明についてはですね。たとえば、中沢新一という文化人類学者がいまだに吉本隆明をヨイショしておりまして、フクシマ以後は日本の大転換とか脱原発を唱えております。わたしはこれは大変結構なことだと思います。中沢新一が脱原発や日本の大転換を唱えるのはいいことだと思います。
 しかし、『DOMMUNE』という雑誌で、皆さん手に取られたことはないかと思いますが、原発の「反対派の意見がいわゆる左翼運動の中から出てきたことで、イデオロギー的な構造も持ってしまった」と述べて、原発の反対派が「資本主義では技術のイノベーションが非常に重要」だということを論理に組み込んでいない、そして、「吉本隆明さんなんかはそのことに限界を感じていて、「反・反核」ということを言ったわけです」(『DOMMUNE』、河出書房新社、2011年11月)。『DOMMUNE』の去年の11月号。この期に及んで、吉本隆明を搦め手から弁護するのはいかがなものでしょうか、とわたしはいいたい。
 これはさりげない持って回った言い方ですけど、吉本隆明およびそれにヨイショしてきた自分自身を、ひそかになし崩し的に取り繕うものだ、とわたしは直感します。(中沢新一は)『毎日新聞』でいま脱原発の意見広告を出そうとしている発起人の1人ですけど、わたしは中沢新一は正直にね、「吉本隆明さん、あなたの原発の弁護は、間違っていますよ」とはっきりいうべきだと思いますよ。また、これまでの発言に責任を取るんだったら、それははっきりいわなければならない。まあ、そういうことをわたしがいうと、酷かも知れせんけどね。
 さっきいいました(ように)、中沢新一が日本の反原発運動は左翼運動から出てきている、だから左翼運動を批判した、吉本隆明はそういうことをいったんだ、これは大間違いです。わたしがこんど朔の本に続いて、農文協(農山漁村文化協会)から『フクシマ・人形峠・核廃棄物』という本を出します(これは仮題で、タイトルは『放射性廃棄物のアポリア ― フクシマ・人形峠・チェルノブイリ』に。3月初めに刊行)。
 そのなかで、日本の反原発運動についても書いておりまして、日本の反原発運動は左翼運動じゃなくて、むしろ保守地盤の地域住民運動から始まったものです。これは歴史的な事実でして、中曽根康弘たちが乗った衆議院特別委員会の一行を350隻の漁船で取り巻いて、実力で阻止した1966年の三重県南島町漁民の長島事件にさかのぼります。そのとき南島町漁民は30人の逮捕者を出した。これは本当に芦浜のこの漁民の闘争が日本の反原発運動の始まりでして、これは左翼運動どころじゃない保守地盤の地域住民運動です。
 おなじ構造が原発を止めた高知県の窪川町とか、それから中沢新一も最近関心を寄せている山口県上関町の祝島も、もともと同様の保守の地盤で始まったものです。左翼運動ではありません。わたしはその上関の住民運動の中心の人たちと30年の付き合いがありますけど、そのころからわたし見ておりますけどね、そうなんです。たしかに、もちろん、社会党・総評系の運動もあります。それから、近年は無党派ないしは超党派の市民運動、あるいはまた、そのネットワークもありますけどね。反原発運動は左翼運動だから吉本さんが批判したんだなんて、こういう取り繕いの発言はわたしはやめてほしいと思います。
 さっきの吉本コーナーにある名前を挙げましたなかでもね。例外としては、田川建三はわたしの本とほとんど2冊くらいじゃないかと思うんですけど、『思想の危険性について』(インパクト出版会、1987年)という本をインパクト出版会から出して、これは本当に吉本隆明の思想をきちっと批判した本です。でうから、さっき24人の親衛隊といいましたけど、田川建三はそうではありません。それから、スガ秀美も最近、『吉本隆明の時代』(作品社、2008年)という本を出しております。これなんか吉本のファンが喜びそうなタイトルですけど、スガ秀美は一定の距離を吉本隆明と取っているので、これもまあ親衛隊とは呼べないと思います。ともかく、こんな調子です。

 しかもね。吉本隆明については批評も論争もない。とくに批評がない。批評しているのはわたしと田川建三だけです。あとは2、3人いるかも知れない。大半の吉本隆明論が、吉本の言葉で吉本を語る、だからこれわたし声帯模写か腹話術だといっている。吉本の言葉で吉本を語っている、これは声帯模写以外の何物でもない。
 それから、新左翼系の学者の座談会の本で(市田良彦・スガ秀美他) 『脱原発異論』(作品社、2011年)というのが出ています、作品社から。これねえ、わたしは、学者先生のヒマ潰しじゃないかと思うんです。わたしが批判したこの吉本隆明の30年前の『「反核」異論』(深夜叢書社、1982年)をですね。ああでもない、こうでもない、と論じているんです。そんなヒマがあったら、フクシマの現実に向き合ったらどうか、とわたしはいいたい。

 これは座談会です。出席者の1人はたしかにそれに気づいているらしく、「我々がこうやって議論していること自体が奢侈ですね。この座談会の本の出版も奢侈です」、といって自嘲気味に語っていますけど、まあ奢侈というのは分を超えたゼイタクという意味です。わたしは本当にまさにいっている通りだと、学者先生の緊張感とリアリティがないんじゃないか、と思わざるを得ないんです。
 最後に、吉本隆明は原発だけが悪いようにわたしがいってように聞こえるかも知れませんけど、この『原子力マフィア』の「序」で取り上げたように、わたしのみるところ戦後思想の枠組みというのが4つあります。1つは日米安保と対米従属、それから2つ豊かな社会(これは大量生産・大量消費・大量廃棄)、3つ西欧流の進歩史観と科学技術信仰、4つ目が公害と環境問題です。
 最初の日米安保と対米従属については、たしかに1960年の安保闘争に吉本もそれに加わりまして、これについては批判したわけですけど、そのあとの3つ全部、吉本は総崩れです。まったく、体制内にべったり貼りついた体制内知識人、そういわざるを得ない。

 

9 原発の宣伝に駆り出された御用学者・マスコミ・文化人・芸能人


 つぎに、マスコミについて、わたしも共同通信というマスコミのなかにいたので、これはいっておかないといけませんけど、この本のなかで取り上げております「抱え込まれた御用学者とマスコミの記者たち」。まあ、御用学者については、皆さんもフクシマの事故のあとにね、つぎからつぎに御用学者が出てきまして、「大丈夫です」「心配いりません」といってきました。もうつぎからつぎに出てくる。
 どういう学者かというと、今回のストレステストの専門家委員の司会役をやっている、東大教授の岡本孝司 。きょうわたしは(経産省への申し入れ行動に参加して)経産省の係長に、岡本孝司は原子力産業から資金を得て研究している学者だが、原子力産業から資金を得た者がチェックの審査っておかしいじゃないか、といったらうなずいていました。これまでの わたしの人形峠の経験でいうと、プレーヤーとレフェリーが一体のは問題だといいましたらね、承知しましたと。
 学者では長崎大学の教授をやった山下俊一というのが、いま福島県の放射線の健康管理アドバイザーとなってフクシマに行っておりまして、フクシマの大学に移ってこういう役割をやってますけど、山下俊一は例によって「大丈夫です」「子どもを外で遊ばせてもいい」、とあの事故のあとにいったんです。フクシマにきて、いって回ったんです。それを真に受けた お母さん方が、子どもを遊ばせて、あとで大変だと、被ばくしていると分かって、もう悔いても悔み切れないような気持ちになっているんです。そういうことを御用学者がいっている。
 マスコミについては、この本のなかでいいますと、読売新聞・朝日新聞これはもう当初から日本の原子力産業に協力した報道をずっと続けておりまして、たとえば『原子力文化』という広報誌に(少なくとも)読売新聞は15人、朝日新聞14人、NHK13人、共同通信6人、日本経済新聞6人、産経新聞4人以下 … 。わたしこれ『原子力文化』が鳥取の県立図書館に全部ないもんだから、大阪の府立図書館まで行って調べ、そこにもないもんだから、広島の県立図書館からコピーを取り寄せ、さらに国会図書館からもコピーを取り寄せて、全部調べた。その一例ですけどね。
 マスコミはですね。フクシマの事故のあとの4月の参議院の予算委員会で、東電の清水正孝社長が「マスコミへの広告・宣伝費は約90億円、交際費は約20億円」と答弁している。国会答弁ですよ。ところが、もっと調べてみると、各電力会社やその連合体の電気事業連合会も含めると、推定2000億円もの膨大な原発・電力マネーがメディアに流れております。当然、マスコミの報道がどういうものになるか、推察できます。そのような状況がある。
 それから、ちょっと時間がないので、最後にさっきいいましたネス湖のネッシーの、文化人や言論人について、ちょっと一言いっておきたい。わたしがさっき苦労して調べた『原子力文化』に登場している、これはもうまさにわたしは『原子力文化』のね、原子力産業の食客だといってます。
 伏見康治・黒川紀章・丹下健三・宮本常一・川喜田二郎・佐々木高明・山口昌男・永井道雄・南博・森毅・広中平裕・竹内均・宮脇昭・西丸震哉・根本順吉・中村桂子・斎藤茂太・朝倉俊一・大林宣彦・佐々淳行・手塚プロダクション・松本零士・藤子不二男・秋竜山・真鍋博・戸塚文子・十返千鶴子・大宅映子・富山和子・田中優子・星新一・宮尾登美子・夢枕獏・竹村健一・山内昌之・川勝平太・藤原正彦・茂木健一郎・養老孟司、等々。
 それで、(脳科学者の)茂木健一郎なんていうのは、『婦人公論』 ― さっきいいました原発の広告を出している、(その)上位に入っている ― 『婦人公論』の、しかも電事連(電気事業連合会)の広告のページに出ておりまして、「資源が乏しく、エネルギーや食料の自給率も低い日本が、豊かな暮らしと繁栄を維持していくには」、原発が必要であると(いっている)。
 それからね。もっとひどいなあと思うのは、皆さんNHKの大河ドラマでご存知かもしれない。わたしはNHKの大河ドラマは見ないんです。なぜなら、いいですか。百姓もね長屋のおかみもね、キンキラキンの一張羅で登場する。おかしいじゃないかとわたしは思っている。見る気にならないんですよ。かつて、黒澤明は百姓の衣服をリアルにするためにね、衣装をドロ水につけて、もんで乾かして、もんで乾かして、ドロ着にした。ところが、NHKはキンキラキン。
 そのNHKのキンキラキンの大河ドラマ、『篤姫』の脚本は田淵久美子てのが書いている。田淵久美子はですね、やはりさっきの『婦人公論』 ― これは、そうそう電力会社の雑誌広告掲載ランキング第五位 ― この『婦人公論』の電気事業連合会の広告のページでこういってるんです。「私は、第四の壁である原子炉格納容器の真上に立ってみたんです。振動や熱さなどは感じなかったけれど、足下では、まさにウラン核分裂が起きているというものすごいパワースポット!思わず「原子炉の真上で愛をさけぶ」という心境になりました」(『婦人公論』二〇〇九年八月二二日号の「ドラマで伝えたい、エネルギーの真実」)。いやいや、ご立派です。わたしだからいうんです。福島第一原発の屋上・真上から叫べば、もっとものすごいウルトラ・パワースポットになるんじゃないかと。ひとつやってみてほしいと。そういいたいです。
 まあ、この文化人のネス湖のネッシーについていうと、もう1人2人挙げますとね。(プロレスラーの)アントニオ・猪木はかつて、青森県の知事選のときに一五〇万円で原発の一時凍結派から呼ばれて、ホイホイと「行きます行きます」と。ところが、原発推進する電気事業連合会に一億円を提示されて、あわてて乗り換える。そのようなエピソードが有名です。
それから、ビートタケシ。わたしはこれもタイコモチだというんですけど、ビートタケシの兄貴かな北野大か、これは御用学者であちこちの原発の宣伝に回っています。ビートタケシが今回のフクシマの事故が起きる前ですけど、地震が起きたら原発に逃げ込むといっていたというんですね。今回、逃げ込んでほしい、福島原発に。わたしはそう思う。まあ、このようにね、文化人・言論人あるいは芸能人が取り込まれておりまして、すさまじい翼賛体制であるといわざるを得ない。これが日本の原子力マフィアの裾野である。そう思います。

 

結び 原発は入口から出口まで放射能のタレ流し


 もう最後になりましたので終わりますけど、わたしは「原発は入口から出口まで放射能いのタレ流しである」(といいたい)。今回のフクシマの事故は、その原発の正体・本体。入口がさっきいいました人形峠。それから、この『イエロー・ケーキ』という映画では、世界のウラン採掘地で起きていること。もうこれは手のつけようにない、取りつく島のないような、膨大なウラン残土やウラン鉱滓が山となって広がり、巨大な湖となって茫漠と連なっております。これいったい誰がどうするのかとそういいたい。
 原発の出口はね。とくにいま下北に集中しています。下北の六ヶ所村、核燃料サイクル。あそこに全部ね核のゴミを持って行こうとしてしてますけど、これもねえ再処理工場などトラブル続き。それから、下北だけじゃなくて、もう困ってしまっている。とくに、今回フクシマで事故を起こした4号炉は、停止している原発の燃料を置いとったら、それも核分裂を起こして水素爆発ですから、核燃料はつねに冷やし続けないといけない。ですから、もうその核燃料のプールも全国の原発のサイトも満杯に近く、それから下北ももう満杯に近い。
 そこで困り果ててね。全国各地の過疎地、離島に中間貯蔵施設をつくろうとして、躍起になっている。去年、モンゴルに日米共同で核廃棄物の処分場なんて出ていました。モンゴルは拒否しましたけど、このように結局あと始末のできないものを大量に出している。それが原子力の正体である、という風にわたしは考えざるを得ません。

 

 

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                        『イエロー・ケーキ』のポスター(配給:パンドラ)