安倍政権と特定秘密保護法

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安倍政権と特定秘密保護法
~ その危険な性格と政権の〝化けの皮〟 ~

 

 

日時=2014年1月12日(日)15:00~16:30
場所=鳥取市中央人権福祉センター
講演=「安倍政権と特定秘密保護法」
主催=9条連とっとり


1 強行採決された特定秘密保護法

 

 これからお手元にお配りしているレジュメの目次に沿いながら、「安倍政権と特定秘密保護法」をテーマに、1時間ほどお話します。レジュメは主として新聞記事のコラージュで、小見出しはいわばトピックの小見出しですが、必ずしも目次と同じではありませんので、ご了解下さい。まず、レジュメの目次の1「強行採決された特定秘密保護法」から始めます。
 安倍政権は衆参両院で「特定秘密保護法」を強行採決し、昨年12月の閣議決定でこれを公布しました。施行は公布から1年以内とされています。資料NO・1の『朝日新聞』(2013年11月27日)の「秘密保護法案 衆院通過」と『日本海新聞』(2013年12月7日)の「秘密保護法は成立」は、いずれも秘密保護法の強行採決を伝える1面トップ記事です。
 この法案は自民党に加えて与党の公明党、野党のみんなの党と日本維新の会の4党の提出によるものです。採決の段階で野党の一部が棄権したり退席しても、つまりみんなの党と維新の責任は大きく、これらの政党の掛け値のない〝素性〟ないしは〝正体〟をさらしたと言えます。
 事実、みんなの党は法案に協力した代表の渡辺嘉美から、江田憲司らが離反して新党の結成に向かって動き出しています。橋下徹は安倍晋三に昨年末に会ってコビを売り、安倍の靖国参拝も称賛していますが、維新の足下はグラグラしていて、安倍の自民につくか新党につくかで、右往左往のテイタラクです。
 テレビのタレント弁護士で人気をはせた橋下徹は、維新の会に右派の石原慎太郎を引きずり出したり、沖縄の風俗利用の発言でボロを出したばかりで、こんな人物が参画する新党など信用できないので、渡辺嘉美同様に自民に吸収されればすっきりします。
 これからお手元にお配りしている資料を使いながら、まず「特定秘密保護法」の危険な性格を指摘し、そのあとに控える原発再稼働、沖縄基地、集団的自衛権、憲法改正といった安倍極右政権の反動的な路線をあぶり出し、最後にいわゆるアベノミクスをはじめとする〝張り子のトラ〟の〝化けの皮〟をはいで、この講演を締めたいと思います。

 きのう今日の新聞で、一つは東京都知事選への細川護熙出馬の動きを通して、もう一つは沖縄県議会による仲井真弘多知事の辞職要求決議から、安倍政権の原発政策や基地政策に強力な異議が噴き出していることは、皆様もご存知の通りですが、わたしは今日の講演でこれらの重要な動きにも触れます。

 

2 特定秘密保護法の危険な性格

 

 きょうの講演の前半は、レジュメの目次の2「特定秘密保護法の危険な性格」の分析に当てます。皆様もご承知のように、「特定秘密保護法」には地方議会、日本弁護士連合会、憲法学者や刑事法学者、日本新聞協会や日本民間放送連盟、日本ペンクラブなど各種団体から数多くの反対の声明や意見書が出されています。

 

福島県議会の意見書 

 

 このうち、地方議会では福島県議会の意見書がもっとも重要です。昨年10月9日の福島県議会の意見書は、「特定秘密保護法」が憲法のうたう基本的人権を侵害する可能性があるとする日弁連の見解を踏まえ、「当県が直面している原子力発電所事故に関しても、原発の安全性に関わる情報が、核施設に対するテロ活動防止の観点から「特定秘密」に指定される可能性がある」と強調しています。
 放射性物質の拡散予測システムたるSPEEDIの情報が事故直後に公開されなかったため、浪江町をはじめ原発周辺の住民が放射線量の高い地域に避難したことが事後に問題となりましたが、福島県議会の意見書は「このような国民の生命と財産を守る為に有益な情報が、公共の安全と秩序維持の目的のために「特定秘密」の対象に指定される可能性は極めて高い」とも指摘しています。
 そのうえで、福島県議会の意見書は「今、重要なのは徹底した情報公開を推進することであり、刑罰による秘密保護と情報統制ではない。… 本法案は、情報掩蔽を助長し、ファシズムにつながるおそれがある」とも付け加えています。念のため、これは左翼の政党や政治家の言葉ではなく、3・11フクシマ原発事故の大災害の切実な体験をした福島県の県議会の意見書です。
 日弁連の海渡雄一が『秘密法で戦争準備・原発推進』(創史社、2013年)の「福島原発事故では何が隠されたのか」で取り上げていますが、政府と東電がフクシマのメルトダウンの事実やスピーディによる放射能の拡散情報を秘匿しようとしたように、安倍政権には原発事故の真実や情報を秘密にしたい意図があります。
 さらに、安倍政権としては、民主党政権下で不十分ながら公けにされた日米の核密約なども、できれば秘密のままでいきたかったし、これから日米の軍事協力の一体化を進め、集団的自衛権を容認して、アメリカの戦争に参加していくという意味でも、海渡雄一が「秘密保全法制は戦争準備のためのもの」とする指摘も当たっています。

 

秘密法の危険性 


 福島県議会の意見書が踏まえた日弁連の意見書は、昨年9月12日に出されました。この日弁連の意見書は法案に対する法的に厳正な批判なので、これを参考にしながら「特定秘密保護法」の危険な性格を見ておきます。
 国会で成立した「特定秘密保護法」は7章構成で、それに附則と別表がついています。第三章「特定秘密の提供」に関連して、「特定秘密」が対象とする事項は「別表」で、①防衛②外交③特定有害活動の防止④テロリズムの防止 ― の4項目にわたっていますが、この「特定秘密」の範囲がきわめて広範で定義が不明確です。
 第四章「特定秘密の取扱者の制限」と第五章「適正評価」は、「行政機関の長」が「特定秘密」の取扱いの業務を行なう者について、これを漏らすおそれがないことの「適正評価」を実施するとしていますが、これはプライバシーや思想・信条の自由などの侵害の危険性をはらんでいます。
 第六章「雑則」は第22条で「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分配慮しなければならない」としていますが、こうした抽象的条文は国民の「基本的人権」や「知る権利」の担保になるものではありません。
 なぜなら、すぐあとで取り上げる自民党幹事長の石破茂の発言は、この「特定秘密保護法」の真意をはからずも暴露し、「基本的人権」や「知る権利」の条文が取って付けたイチジクの葉っぱにほかならないことを、いわば問わず語りに示しているからです。
 そもそも、国民や取材者にはいかなる情報が「特定秘密」として「漏えい禁止」の対象となり、何が「処罰」されるかについて「予測」が困難です。のみならず、かりに「特定秘密」の「漏えい」の疑いで不当に逮捕され、「基本的人権」や「知る権利」をもとに裁判に訴えても、裁判の過程で「特定秘密」を明かすことができないわけですから、これらの権利を守る手立てにも事欠きます。
 第七章「罰則」は、第23条で「特定秘密」を漏らしたときは「十年以下の懲役」び処するとし、第25条でこの「行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役」に処するとしています。ここで、「故意・過失」による漏えいのほか、漏えい行為の「未遂、共謀、教唆、煽動」についても「処罰」の対象としていることは、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」とする憲法31条の「罪刑法定主義」に違反しています。 
 このような過度で広範な罰則の拡張は、政府が秘密にしたいと欲する事項、あるいはまた、国民の目には触れさせたくないと欲する事項に、少しでも近付こうとする行為を「刑罰」により厳しく禁じ、国民の「知る権利」を事前に塞いでしまおうとするもので、国民の「知る権利」だけでなく「言論・表現の自由」や「取材・報道の自由」を侵害することになります。
 しかも、「特定秘密」を漏らした者は「10年以下の懲役」という厳罰ですから、これでは行政機関の職員もマスコミの記者もこうした重罰化を脅威に感じて、かれらの正当な行政行為や取材活動を委縮してしまいます。そればかりでなく、市民の活動もオンブズマンの活動も同様に委縮せざるを得ません。
 こうした数々の問題点をかかえた「特定秘密保護法」の批判は、「日弁連の意見書に続いて、憲法・メデイア法の研究者と刑事法の研究者も昨年10月28日、それぞれ記者会見して反対声明を発表しました。
 まず、憲法・メデイア法の研究者の反対声明は、呼びかけ人24人、賛同者118人、計142人で、呼びかけ人の山内敏広・一橋大名誉教授は、「法案は憲法の3つの基本原理である基本的人権、国民主権、平和主義と真っ向から衝突し侵害する」と指摘しました。
 刑事法の呼びかけ人の村井敏邦・一橋大名誉教授は、「(軍事機密を守る目的で制定された)戦前の軍機保護法と同じ性格。戦前の影響を考えれば、刑事法学者は絶対反対しなければならない」と呼びかけました。
 軍機保護法は満州事変直後の1899年(明治32)に制定され、日中戦争勃発の1937年(昭和12)に対象範囲を拡大強化して全面改正されましたが、治安維持法ともども「人を見ればスパイなり」で、特高警察や憲兵隊による多数の検挙者を出したことは言うまでもありません。
 この軍機保護法でスパイの濡れ衣を着せられた「宮澤・レーン事件」なるえん罪事件がありました。北海道帝大の学生の宮澤が1941年(昭和16)、たまたま旅先の根室で見た海軍飛行場の話を友人のレーン夫妻に話し、スパイ行為に問われて拷問にかけられたのですが、この海軍飛行場の存在は新聞でも報じられていた公知の事実だったのだから、これはたまりませんね。「特定秘密保護法」の危険性を暗示する事件です。
 「特定秘密保護法」の危険性は過去にさかのぼらなくても、資料NO・1の『東京新聞』(2013年12月1日)の「絶叫デモはテロ行為」と『朝日新聞』(2013年12月12日)の「秘密報道「抑制される」で示したように、この悪法を提案した自民党の幹事長たる石破茂の発言からも明らかです。恥ずかしながら、石破茂はわたしと同じの鳥取県出身で、地元鳥取では衆院選初出馬の第1声のあと、うしろに控えていた母親に「ママ、これでよかった?」、と聞いたのが〝語り草〟の政治家です。
 まず、「絶叫デモはテロ行為」発言は、昨年11月29日付けの石破のブログに掲載され、すぐあとブログを削除しないまま記者団に発言を撤回したが、『朝日新聞』は12月3日の社説で「秘密保護法案」は「石破発言で本質あらわ」と書きました。
 しかし、石破茂の発言には続編があり、12月11日の日本記者クラブでの会見で、「特定秘密保護法」で指定された秘密の報道は「何らかの方法で抑制される」と述べ、新たな火ダネに点火しました。その2時間後、石破は自民党本部で記者団に「抑制を求めたものではない」と釈明しましたが、真意はありありです。「特定秘密保護法」の第二十二条の「基本的人権」や「知る権利」への配慮が、〝取って付けた〟ような〝イチジクの葉っぱ〟と呼ぶゆえんです。

 

共謀罪

 
 「特定秘密」の漏えいに関して「共謀、教唆、煽動」した者は、「特定秘密保護法」の第25条で「5年以下の懲役」とされますが、東京五輪にかこつけて「特定秘密保護法」とセットで「共謀罪」が浮上してきたことが、資料NO・1の『朝日新聞』(2013年12月12日)の「共謀罪そろり再浮上」の記事からうかがわれます。安倍政権はこれに先立って、「特定秘密保護法」とセットでアメリカが求めていた日本版NSCたる「国家安全保障会議」の創設を、昨年11月に国会で成立させました。
 しかし、「共謀罪」については、いま取り上げた記事が「安倍政権は来年の通常国会には提出せず、慎重に検討を進める構えだ」と書いている通り、模様見で出せたら出したい構えと考えていい。自民党政府は「共謀罪」の制定の理由として、2000年11月に国連総会で採択された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約「国連越境組織犯罪防止条約」を挙げ、2003年の国会提案いらい国会で3度廃案になっています。
 2009年に政権交代を実現した民主党政府は、「共謀罪を導入せずに国連組織犯罪防止条約を批准」を公約していましたが、民主党政府の江田法相下の法務省が何らかの立法措置が必要と検討・準備していたため、日弁連は2012年4月に「共謀罪の創設に反対する意見書」を出しました。
 そもそも、わが国の刑法をはじめ現行法には、共謀罪が予備罪、準備罪、陰謀罪などとともに、つまり未遂に至らない段階で処罰することが可能な立法が、62の重大犯罪について存在しています。共謀罪は13の犯罪について規定されていますが、実際に適用された例は聞きません。
 これまで何度も廃案になった自民党政府の「共謀罪」法案は、600以上の犯罪について一挙に「共謀罪」を新設しようとするものでした。日弁連の意見書は600以上の「共謀罪」の新設は、「思想」ではなく「行為」を処罰するというわが国の刑事法体系を根本から覆し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすので、新設すべきではないとしています。わたしたちが「特定秘密保護法」にも関連して、「共謀罪」の新設を警戒しなければならないゆえんです。

 

秘密法撤回の国民運動を

 

 ここで、「特定秘密保護法」についてのマスコミの報道を検証しておきますと、東京新聞、朝日新聞、毎日新聞はキャンペーンや社説で法案に反対の姿勢を示しましたが、保守派の読売新聞、産経新聞は法案に翼賛の論調でした。朝日や毎日などの報道の姿勢はそれなりに評価できるとはいえ、元文藝春秋編集者で歴史研究者の半藤一利が「メディアの気づき方が遅かった … 9回裏になってワイワイやっても無駄であった」(共同通信配信による『日本海新聞』2013年12月22日の現論「遅いメディアの気づき」)と評したように、遺憾ながら遅きに失するものでした。
 法案を審議中の昨年11月12日の『毎日新聞』の世論調査では、法案に「反対」59%、「賛成」29%でした。資料NO・2の上段左に挙げた昨年12月2日付けの『朝日新聞』の世論調査では、法案に「反対」50%、「賛成」25%でした。その右の12月10日の『日本海新聞』の共同通信による法案成立後の世論調査では、法案の「修正・廃止」を求める者が82%で、「このまま施行」が9%でした。「特定秘密保護法」に反対する国民の世論の動向は明らかです。
 「特定秘密保護法」の反対運動は全国で展開されましたが、わたしたちの地元でも資料NO・2の中段から下段にかけての『日本海新聞』の「戦後最大の悪法」(2013年11月27日)と「秘密法廃止求め活動」(2013年12月22日)の記事を掲げましたように、学識経験者など鳥取県内の有志による「特定秘密保護法案に反対する鳥取県の会」が反対の声明を発表したり、あるいはまた、法案成立後にも秘密保護法廃止を求めて活動していくことを確認しています。
 自民党の圧倒的多数下の法案成立は止めようがありませんでしたが、法案が成立したらそれで終わりでなく、この法案の実質的な働きを止めるだけでなく、法それ自体の廃案や撤廃を求めていく国民運動を、新たに巻き起こすきっかけにしなければならないと思います。そのような意味で、資料NO・2の下段左の『日本海新聞』(2013年12月25日)の「「秘密法」廃止求める」の記事で示した通り、「特定秘密保護法」廃止を求める米子市議会の本会議で「意見書」が可決されたのは重要です。
 事実、法案成立後に廃止・撤廃・凍結を求めた全国の地方議会の意見書は、昨年末までに米子市も含めて14道県の41市町村議会に上っています。法の撤廃まで求めなくとも、反対ないしは抜本的見直し・修正・慎重な運用を求めた地方議会を含めると、17都道県の68市町村会に増えます(『神戸新聞』2014年1月6日の「秘密保護法/全国41議会 撤廃意見書」)。このような地方議会の意見書が、法案の撤廃を求めていく国民運動の第一歩となることを期待せざるを得ません。

 

3 安倍政権が目指しているもの


 ひと昔前の流行歌に「昔の名前で出ています」という歌詞があったと思いますが、1昨年暮れに先祖返りで再登場した自民党の安倍政権は、〝対米従属〟のトップバッターでTPPへの参加を表明し、原発の再稼働と輸出、沖縄の普天間基地の辺野古移設、集団的自衛権の容認、憲法改正などを進めるべく動き出しました。ここで、レジュメの目次の3「安倍政権が目指しているもの」に入ります。


原発再稼働

 

 なかでも、わたしにとって重大な関心事の原発は、安倍政権の再登場で再稼働にはずみがつき、資料NO・2の下段右の『朝日新聞』(2013年7月9日)の「5原発10基 再稼働申請」の記事で示しましたように、電力各社は雪崩を打って昨年7月8日、北海道の泊原発、若狭湾の大飯原発と高浜原発、四国の伊方原発、九州の川内原発の5原発10基の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請しました。
 その直後、九州電力は玄海原発の2基を追加申請しました。その下の『日本海新聞』(2013年11月26日)の「再稼働へ審査申請」の記事は、中国電力も遅れてはならじと昨年12月末、駆け込みで島根2号機の安全審査を申請したことを伝えるものです。原発の再稼働だけではありません。安倍首相がトップセールスで進めている日の丸原発の輸出も、アナクロニズムがはなはだしいものです。それどころではないではないか、足下のガタガタボロボロになったフクシマの原発は、廃炉も汚染水のダダ漏れもお手上げの状況ではないか、とわたしは言いたい。
 3・11フクシマの大惨事では、16万人の住民が避難し、いまだというよりこれからも、14万人がふるさとに帰れない。本来なら、法令で放射線の管理区域として立ち入り禁止にすべき広範囲の高濃度の汚染地帯に、何と200万人が住んでいるのです。そこへもってきて放射能汚染水のダダ漏れです。安倍首相は東京オリンピック招致のため、「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は完全にブロック」の〝大ボラ〟を吹きましたが、とんでもない話で汚染水の太平洋への〝タレ流し〟が止まりません。
 安倍政権は汚染水漏れを防ぐため、大手ゼネコンたる鹿島建設の〝凍土遮水壁〟計画に、470億円の国費の投入を決めました。政府も大手金融機関も私企業たる東電のとんでもないオモラシのあと始末に、ジャブジャブと国費や資金を投じています。これは〝泥まみれ〟の〝沈みゆく〟原発をあくまで維持するという国策のためですが、わたしに言わせれば日本の原発は〝巨大な泥舟〟の〝タイタニック号〟です。
 それにしても、歴史はぶりかえすものです。太平洋戦争末期の旧日本軍を思い出しますが、〝原発特攻隊〟の出撃を指令した〝安倍大本営〟は、自民党の電力族・原発族を勇気づけました。昨年5月に発足した自民党の原発推進の議員の母体「電力安定供給推進議員連盟」は、通産官僚出身で島根原発の地元たる島根県選出の細田博之を会長にいまや140人を超え、410人の自民党国会議員の3分の1を占めるに至っています。
 一方、これも重要な動きですが、自民党内部にも河野太郎を代表世話人とする脱原発を掲げる「エネルギー政策議員連盟」というのがありまして、原発を「重要なベース電源」として「再稼働推進」を明記し、政府のエネルギー基本計画を抜本的に見直すよう求める提言案を昨年末にまとめました(『東京新聞』2013年12月30日の「原発増設認めない、自民議連、政府に提言へ」)。
 昨年、小泉純一郎元首相の「脱原発宣言」ないしは「原発ゼロ」の提唱が注目を集めましたが、ここにきて東京都の猪瀬直樹の辞任を受けた知事選で、自民党が推す舛添要一が立候補表明するなか、1993年に非自民連立政権の首相になった細川護熙が、「脱原発」を旗印に小泉純一郎とも連携し、政党の公認や推薦を受けず無所属での立候補を模索していると伝えられ、わたしも重大な関心をもって行方を注視しています。政党の公認や推薦を受けぬ無所属の立候補ということがミソで、自民党の絶対多数による安倍政権の暴走を食い止め、原発の再稼働や政治の閉塞を打破していくうえで、きわめて重要な動きです(『朝日新聞』2014年1月11日の「細川氏 出馬へ最終調整」、『日本海新聞』同1月11日の「細川元首相出馬へ」=共同通信配信=)。
ついでながら、ネットでウィキペディアを開いて見ますと、自民党幹事長の石破茂の長女は2011年の3・11東日本大震災つまりフクシマの大惨事の年に、東京電力に入社しています。

 

沖縄基地 

 

 わたしにとって原発と並んで重大な関心事は、沖縄の基地の現状と行方です。昨年末に出版した新著『フクシマ・沖縄・四日市 ― 差別と棄民の構造』(編集工房朔、星雲社発売)で、 ― この新著は会場の受付のところで扱っていますが ― わたしがもっとも力を込めて書いたのが、第二章「沖縄 ― 軍事植民地と構造的差別」です。
周知のように、普天間の移設先は「可能であれば国外、最低でも県外」を公約して政権についた民主党の鳩山政権が挫折し、菅政権ついで野田政権と相次ぐ政権の劣化と自壊の果てに、民主党そのものが消滅寸前の状態です。
 自民党の安倍政権は自民党幹事長の石破茂ともども、脅しすかしの猛烈な圧力を沖縄にかけました。そして、まるで〝3段跳び〟さながら、沖縄自民党の①国会議員②県会議員③仲井真知事をつぎつぎけ落とし、従来の「県外移設」の主張を撤回させて「県内移設」の屈辱を飲ませました。その結果が、資料NO・3の上段左の『毎日新聞』(2013年12月28日)の「辺野古埋め立て承認」の記事、および、その右の『読売新聞』(2013年11月26日)の「普天間飛行場の機能は名護市辺野古へ」の地図です。

 ついに安倍政権の圧力に屈して、「辺野古埋め立て」を容認した仲井真知事の「県外移設堅持」の開き直りは、沖縄県議会がおととい1月10日の本会議で可決した知事の辞任要求決議で強調するように、「不誠実の極み」で「県民への冒涜」であり、「もはや県民代表の資格はない」と断じた通りです。沖縄県議会は知事の辞任要求決議とともに、普天間基地の閉鎖・撤去と合わせて辺野古移設断念を求める意見書も可決しています。
 普天間基地は宜野湾市の住宅地のど真ん中にあり、最近問題のオスプレイが24機配備されています。その普天間の移設先とされる名護市の辺野古ですが、沖縄県内で基地を〝たらい回し〟しながら、安倍政権の「沖縄の基地負担軽減」は〝安請け合い〟の〝2枚舌〟で、何をか言わんやです。
 安倍政権は1952年のサンフランシスコ講和条約発効から61年目の昨年4月28日、「主権回復」の政府式典を東京で開催しました。しかし、61年前に本土から切り離され、アメリカの軍事植民地下で憲法の保障も人権を奪われた沖縄では、この日は「屈辱の日」と呼ばれていて、沖縄の民衆は宜野湾市で「屈辱の日」大会で政府式典に対抗しました。安倍首相は「主権回復」の政府式典で、「沖縄が経て来きた辛苦に深く思いを寄せる努力をなすべきだ」と述べたそうですが、これまた自らの矛盾する言動の余りの軽さを露呈した、まったくの〝おためごかし〟の〝2枚舌〟です。
 少し前に、「女性を犯す前にこれから犯しますよというか」という沖縄防衛局の田中総局長の発言が問題になりましたが、安倍首相は「辺野古を犯す前」に「これから犯しますよ」とは言わず、あたかも相手を気遣うかのように「沖縄の辛苦」に「思いを寄せるべきだ」、などと歯に浮くようなことを平気な顔でイケシャーシャーと口にしていて、わたしはこの〝おためごかし〟の〝2枚舌〟に思わず絶句してしまいました。

 

靖国参拝

 

 資料NO・3の下段左の『日本海新聞』(2013年12月27日)の「安倍首相が靖国参拝」の記事に挙げたように、昨年12月26日に安倍首相は靖国神社に参拝しましたが、このあと記者団に語った言葉が「不戦の誓いをした」「中国、韓国の人の気持を傷つける考えは毛頭ない」もまた、驚くべき〝おためごかし〟の〝2枚舌〟です。
 こうした〝2枚舌〟は「三角形は丸い」とか「カラスは白い」と言っているに等しく、わたしはさきの新著『フクシマ・沖縄・四日市』で、ジョージ・オーウェルの『1984年』に出てくる「ニュースピーク」(新語法)ないしは「ダブルシンク」(二重思考)の一種だと批評しました。しかし、それはオーウェルに引き寄せて解釈するような高級なシロモノではなく、口から出まかせ何でも安請け合いの〝詐欺師の言葉〟、でなければ、〝幼児の言葉〟と考えざるを得ません。
 つまり、安倍首相の〝2枚舌〟は、かれの〝幼児性〟や〝幼児感覚〟を表わすもので、その延長上の〝自己中〟つまり〝自己中心主義〟の表明である、とわたしは考え直したのです。同志社大学教授の浜矩子が『東京新聞』(2013年12月29日)のコラム「意図無ければ罪も無しか」で、安倍首相の靖国参拝についての発言を取り上げ、これは人の痛みが全く分からない「新生児」の「幼児的感覚」だと酷評したのは、そのものズバリで当たっています。なぜなら、「新生児」や「幼児」には他者なるものは存在しないので、生まれながらの「自己中」だからです。
 安倍晋三の〝幼児性〟や〝幼児感覚〟で思い出すのは、安倍が子どものころ祖父の岸信介の膝の上か何かで、「アンポ・ハンタイ、アンポ・ハンタイ」と叫んで遊んでいたというエピソードですが、その祖父の岸信介は1960年安保闘争で批判の的となった当時の首相です。むろん、安倍晋三の〝幼児性〟や〝幼児感覚〟が、いつまでも岸信介の膝の上にあると言わないものの、その精神構造が大人でありながら子どもの〝自己中〟であることには変わりません。
 大人でありながら子どもの精神構造という意味では、恥ずかしながらわたしと同郷の鳥取県選出の自民党議員である石破茂も同様です。1986年に衆院選初出馬のさいの第一声のさい、公衆の面前で「ママ、これでよかった?」と母親の確認を求める〝幼児性〟や〝幼児感覚〟を露出し、その後は防衛相時代の執務室にプラモデルの軍艦や戦闘機を飾って〝軍事オタク〟の異名を持ち、いまでは自民党の幹事長に成り上がりましたが、石破茂が〝自己中〟の〝お山の大将〟であることは一貫しています。
 昨年11月末、本土に連行されて「県外移設」から「県内移設」に転向させられ、こうべを垂れる沖縄の国会議員や県会議員を家来のように従えて、自民党本部で記者会見した石破茂を『沖縄タイムス』は「社説」(昨年11月28日)で「琉球処分官」になぞらえました。要するに、石破茂は成り上がりの田舎者に特有の、〝子ども遊び〟の〝お山の大将〟の気分が抜けないのです。

 

憲法改正


 安倍晋三が究極的に目指しているものが、憲法改正と軍国主義の復活であることは言うまでもありません。しかし、安倍首相はブレーンや側近の入れ知恵もあって、憲法改正の〝本丸〟を攻める前に外堀から手を着けて、まず〝二の丸〟や〝三の丸〟を落としていく作戦を取ろうとしているように見えます。「特定秘密保護法」は外堀を埋める作業の一環で、いわば憲法改正の予行演習と言えなくもありません。
 資料NO3の中段の『朝日新聞』の「本音の9条 首相封印」の記事で示すように、安倍首相は世論に配慮して憲法改正の「本音の9条改正」を声高には叫ばず、その代わりに憲法96条の改正を前面に押し出す戦略です。憲法96条は「憲法改正の手続き・憲法改正の公布」を定めたもので、憲法の改正は「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」が必要としていますが、この「三分の二以上」のハードルを下げて、憲法改正をしやすくしようとするものです。その右下のイラスト「ストライクゾーン変更」は、これをおちょくったものです。
 イラストの上の「集団的自衛権も「9条範囲内」の記事は出典を入れ忘れましたが、これは『読売新聞』(2013年12月1日)の1面トップ記事です。これまでの政府の見解では、1981年5月29日の政府答弁書で示したように、「集団的自衛権の行使」は「憲法9条の範囲を超える」というものでしたが、安倍政権の憲法解釈試案はこれを覆し、いわゆる〝解釈改憲〟で「集団的自衛権」も「9条の範囲内」として認めようというのです。
 憲法が司法の判断や改正の手続きによらず、政府の判断でいかようにも変えられるなら、たちまち〝法治国家〟の根幹が崩れます。安倍政権が〝解釈改憲〟で目指すのは、アメリカの戦争に同盟国として参戦するための意図であることは明らかで、政治評論家の森田実の言葉を借りれば、〝従米軍国主義〟への道にほかなりません。〝従米軍国主義〟というのは〝対米従属〟の〝軍国主義〟という意味です。

 

4 安倍政権の〝化けの皮〟をはぐ


 それにしても、かくも危険な極右の安倍政権はどうして生まれたのか。むろん、民主党の管政権と野田政権が憲法9条の平和主義を脱ぎ捨て、尖閣諸島の国有化で日中の緊張を高め、対米従属のTPPを「第二の開国」だなどと「売国的」な言辞で提案したかと思うと、東日本大震災やフクシマの大惨事のあと始末をよそに財務省と消費増税にうつつを抜かす、この出来の悪い〝落第民主党〟が〝安倍極右政権〟の道を履き清めたのです。
 さて、時間も迫ってきましたので、レジュメの目次の4「安倍政権の〝化けの皮〟をはぐ」で、きょうの講演を締めたいと思います。わたしはさきに安倍晋三や石破茂の〝幼児性〟ないしは〝幼児感覚〟を指摘しましたが、それではなぜアタマも言葉もこれほど軽い幼児的な政治家に、いま安倍政権が進めているような手の込んだ危険な政策をつぎつぎ構想し推進できるのか、との疑問を皆様も持たれるかと思います。

 

ブレーン政治

 

 それは野党も不在の自民党の絶対多数を願ってもないチャンスとして、悪賢く抜け目のない経済・財政・外交・防衛にわたる官僚群が背後につき、大手経営者や御用学者たちを〝ブレーン〟として、いわば保守政財界の〝総がらみ〟の〝敗者復活戦〟で、自民党の安倍政権を支えているからだと申し上げたい。つまり、アタマや言葉の軽いお飾りのようなシャッポは、モーレツな毛ムクジャラの巨大な数々の馬の足で立っているのです。
 2006年9月の第一次安倍内閣の成立のとき、安倍晋三はブッシュ政権のキリスト教原理主義の「グラスルーツ・コンサバティブ」(草の根保守)を手本に、日本政策研究センター所長の伊藤哲夫や京大教授の中西輝政ら、いわば歴史・教育分野のブレーンの〝5人組〟を〝ご意見番〟として、首相就任直前の官房長官時代に終戦記念日を避けて4月に靖国参拝をしています。
 現在の第二次安倍内閣を経済・財政分野で支えるブレーンの筆頭格は、保守系のベテラン経営者約10人で運営される「さくら会」です。この「さくら会」は前回の第一次安倍内閣を支えた「四季の会」の実質的な後継組織で、JR東海の葛西敬之会長と富士フィルムホールディングスの古森重隆会長を発起人に、三菱東京UFJ銀行の畔柳信雄相談役や三菱商事の小島順彦会長などで構成されています(『毎日新聞』2012年12月18日の「衆院選:自民圧勝/「政財」の蜜月、復活、再登板歓迎」)。
 「さくら会」の前身の「四季の会」は、やはりJR東海の葛西会長が幹事役をつとめる財界人の集まりで、そのなかには東京電力の勝俣恒久、新日本製鉄の三村明夫、三菱重工の西岡喬といった、そうそうたる財界本流のトップ経営陣が名を連ねていました。
 この「四季の会」の主要メンバーの富士フィルムホールディングスの古森重隆会長は当時、安倍の強いあと押しでNHKの経営委員長に選ばれましたが、その古森がNHK会長に任命したアサヒビールの福地重隆相談役も「四季の会」のメンバー、福地の後任としてNHK会長に就任した松本正之もJR東海の元副会長で葛西の部下。このためNHKのトップ人事は「四季の会のたらい回し」と酷評されました。財界のメデイア支配の構図が浮かび上がってきます。NHKの経営委員には安倍の「お友だち」が多数送り込まれているとも言われています。
 ところで、「アベノミクス」には「3つの司令塔」があります。1つ目の「経済財政諮問会」はマクロ経済を扱い、安倍首相を議長に日銀総裁の黒田東彦、東大教授の伊藤元重、三菱ケミカルホールディングス社長の小林喜光、東芝社長の佐々木則夫、日本総合研究所の高橋進ら。
 2つ目の「産業競争力会議」は成長戦略を扱い、安倍首相を議長に慶大教授の竹中平蔵、ローソンCEDの新浪剛士、楽天社長の三木谷浩史、武田薬品工業の長谷川閑史ら。
3つ目の規制緩和の「規制改革会議」は、住友商事相談役の岡素之を議長に、政策研究大学院教授の大田弘子、フューチャーアーキテクト社長の金丸恭文らです(『東洋経済オンライン』(2013年6月24日)。

 NHKの経営委員会は昨年末、任期満了のNHK会長の松本正之の後任を三井物産出身の籾井勝人に決めました。NHKが重要なことを報道しないなど、その報道姿勢に疑問を持っておられる方も少なくないと思いますが、それは民放の大スポンサーに相当するNHKの経営委員や会長が、「安倍のお友だち」であることと無関係ではないとわたしは考えます。
なお、

 アベノミクスの経済ブレーンとしては、イエール大名誉教授の浜田宏一や静岡大教授の本田悦朗らも欠かせません。

 

アベノミクス


 さて、これからわたしはアベノミクスが財政破綻を深化させることを強調します。資料NO4の上段左の「アベノミクスの三本の矢」を見て下さい。これは昨年12月20日の共同通信配信による『日本海新聞』の「点検 安倍政権の1年」の記事の表から取ったものです。
 アベノミクスの第一の矢は「大胆な金融政策」で、日銀が国債を大量購入し、資金提供を2倍にして、2年間で2%の物価上昇を目指すというものです。第二の矢は「機動的な財政政策」、第三の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」、と続きます。
 しかし、アベノミクスによる大胆な金融・財政政策で景気は回復傾向にあると言われますが、それによる株価上昇や円安進行は内外の投資家による投機によるもので、庶民に景気回復の実感がないことが端的に示すように、それは実体経済の回復や内需の拡大につながっていません。つまり、安倍政権の金融・財政政策は、言葉や幻想による期待が先行し、歯止めなき投機マネーの注ぎ込みによるバブルでしかなく、いずれ世界的な金融危機と財政破綻に行き着かざるを得ないのです。
 しかも、安倍政権の財政政策は、生活扶助基準の引き下げなど庶民や労働者にかかわる財政支出を削減しながら、大型の公共事業や軍事支出、あるいはまた、フクシマのダダ漏れの放射能汚染水対策や原発再稼働への支出など、もっぱら浪費的性格の財政支出を増大させています。それはつまるところ、国債発行の増大に頼らざるを得ず、それでなくとも深刻な財政破綻の危機をいっそう深化させてしまいます。

 

財政破綻


 資料NO・4の中段から下段の左に挙げた『日本経済新聞』(2013年8月10日)の「国の借金1000兆円突破 国民1人当たり792万円」の記事、および、『読売新聞』(2013年12月24日)の「国と地方の借金1000兆円超…GDPの2倍に」の記事をご覧ください。いいですか、現在日本は国民1人当たり約800万円の借金を抱え、それは国民総生産の2倍に当たるのです。 
 それなのに、資料NO・4の下段右に挙げた「米国債の保有ランキング」(土井淑平『フクシマ・沖縄・四日市 ― 差別と棄民の構造』、編集工房朔、星雲社発売、2013年より)にある通り、日本はドル建ての米国債を90兆円も買わされ、中国とともに財政的にアメリカを支えているのです。この米国債はアメリカのベトナム戦争・湾岸戦争・アフガン戦争・イラク戦争といった戦争資金の補填に当てられています。
 わたしは声を大にして言いたい、「それどころではないだろう。自分の国家財政そのものが、カチカチ山のタヌキなのに」と。皆様も子どものころ絵本で見た方もあるかと思いますが、〝カチカチ山のタヌキ〟とは火がついて燃える薪を背負ってアタフタする、昔話の絵本に出てくるタヌキのことです。アメリカは日本にもまして世界最大の〝カチカチ山のタヌキ〟です。
 アメリカの財政赤字は2009会計年度から2012会計年度まで4年連続で1兆ドル(1ドル100円として100兆円)を超え、昨年ついに米連邦議会が債務上限を引き上げない限り、米国債の債務不履行(デフォルト)必至となり、「「財政の崖」(フィスカル・クリフ)と呼ばれる、文字通り崖っぷちの重大かつ深刻な危機に陥りました。
 このため、皆様はあまり関心を持たれなかったかも知れませんが、資料NO・4の右側に掲載した『読売新聞』(2013年10月2日)の「米政府機能 一時停止」の記事に見るように、昨年10月からアメリカの政府機能の一部停止が始まり、中央省庁や国立公園や国立博物館などが相次いで閉鎖されました。
 アメリカが債務不履行(デフォルト)に陥れば、中国や日本が持っている90兆円に近い米国債が一瞬のうちに紙クズと化すだけでなく、全世界がリーマン・ショックどころではない地球大の第二次大戦後最大の金融財政危機に引きずり込まれ、このままでは全世界が未曾有の大恐慌寸前の情勢でした。
 その下の『日本海新聞』(2013年10月18日)の「米国債デフォルト回避」の記事が伝える通り、米議会の苦肉の妥協で債務上限を短期的に引き上げ、少なくともことし2月までは連邦政府も債務つまり借金を増やすことができるようになって、からくも危機は回避されたとはいえ、アメリカが〝断崖絶壁〟の〝時限爆弾〟を抱える恐ろしい危機にあることは、いささかも変わりません。

 

タイタニック号のジャパンハンドラー

 

 にもかかわらず、恐ろしいことに、日本の官僚や政治家も含めた安倍政権の外交・防衛のブレーンたちは、アメリカの「ジャパンハンドラー」に牛耳られているのです。「ジャパンハンドラー」は「日本を操縦する者」または「日本を飼い慣らした者」とでも訳せますが、いわゆる知日派の人物たちが含まれます。政治評論家・森田実は月刊誌『自然と人間』の昨年12月号に載った「安倍政権全面批判」で、アメリカの対日政策を動かしている「ジャパンハンドラー」のなかには、「防衛(軍事)のジャパンハンドラー」と「経済のジャパンハンドラー」の2つの流れがあると指摘しています。
 一方で、「防衛(軍事)のジャパンハンドラー」は安倍政権に対して、解釈改憲による集団的自衛権を迫り、その第一歩として特定秘密保護法の制定や日本版NSC(国家安全保障会議)の創設を求めました。他方で、「経済のジャパンハンドラー」はTPPへの参加を日本に強要しました。これこそ、安倍政権の〝対米従属路線〟、なかんずく、森田実のいわゆる〝従米軍国主義〟の背後勢力であることは間違いないでしょう。


 さきに、わたしはアメリカの財政が〝断崖絶壁〟の〝時限爆弾〟であると言いましたが、アメリカの元会計検査院院長のデイヴィッド・ウォーカーも、現在のアメリカが滅亡寸前のローマ帝国に「驚くほど似ている」と警告しています。こうして見てくると、アメリカは牧歌的な〝カチカチ山のタヌキ〟というよりも、地球的規模で沈みゆく〝巨大なタイタニック号〟と言った方が、より当たっています。日本は経済においても軍事においても、この沈みゆく〝巨大なタイタニック号〟への〝対米従属〟からの脱却を迫られているのです。
わたしは昨年、特定秘密保護法が成立し、原発再稼働の動きが強まり、沖縄辺野古埋め立ての強要など、自民党絶対多数下における〝安倍政権の反動路線〟の〝暴走〟が続いて、いわば〝出口〟なき〝政治の閉塞〟の状況にまったく暗い気持で年末を過ごしましたが、年が明けて東京都知事選や沖縄県議会の新たな動きが出てきて、やっと〝愁眉を開いた〟という思いです。変わらぬ強い意志と希望がある限り、〝世の中は変えられる〟ことを信じて、皆様とともにこの1年に立ち向かえたらと願います。

 最後に、わたしはきょう1月12日告示、19日投開票の沖縄の名護市長選、および、1月23日告示、2月9日投開票の東京都知事選を、いずれも重大な関心を持って見守っています。むろん、名護市長選では普天間基地の辺野古移設に反対する稲嶺進の当選を期待します。
東京都知事選については、全国の脱原発派のなかからも、細川護熙や小泉純一郎は過去の経歴からしてクリーンでないので信じられない、といった意見もあるようですが、わたしは過去にさかのぼっての〝クリーン信仰〟や〝純潔信仰〟よりも、現在の〝政治的状況〟における〝政治的判断〟こそ重要とする見地から、もし細川護熙が脱原発を掲げて都知事選を闘うなら、昨今の閉塞的な政治状況の打破とその全国的な波及力も考えて、これを断固として支持します。わたしは政治にとって重要なのは、むろん一定の理想や正義は掲げるのは当然として、いまある状況のなかでの〝政治的〟な〝有効性〟が大事であって、この点で理想や正義の純粋性や自己完結を優先する、〝理想主義者〟や〝純粋主義者〟と見解を異にします。
わたしは昨年10月の鳥取県教育研究集会での報告「放射能汚染水のダダ漏れと小泉純一郎の脱原発宣言をめぐって」でも申し上げた通り、いかなる歴史も〝理想主義〟や〝目的意識的〟な行動だけで動くものではなく、いわば〝想定外〟の〝ハプニング〝を伴うことなくして、およそ変革は困難であるとの観点から、〝ハプニング〟といえる小泉純一郎の脱原発宣言を評価しました。今回の脱原発を掲げた細川護熙の都知事選出馬も、もしそれが本当に実現するなら、わたしにとって〝もう一つのハプニング〟で、大いに評価し歓迎せざるを得ません。

 

(追記)この講演の録画は追ってユーチューブでも公開の予です。

 

【講演レジュメ】

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