大飯原発の再稼働以後の原発状況 / 寸劇「原発のないふるさとを!」

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大飯原発の再稼働以後の原発状況

        =2012年度 鳥取県教育研究集会=

        分科会「環境・公害と食教育」における報告

 

      日時:2012年10月20日
      場所:県立青谷高校
      主催:鳥取県教職員組合/鳥取県高等学校教職員組合
      報告者:土井淑平

 

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1 大飯原発の再稼働と関西広域連合の抵抗と挫折

 

 日本の原発は5月5日、定期点検などで全部止まりました。しかし、野田政権は6月17日、大飯原発の再稼働を決定し、大飯3号機が7月1日に再起動、4号機が7月18日に再起動しました。
 全国の市民が激しい憤りを抱いたことは言うまでもありません。むろん、大飯現地にも全国から市民が抗議に出向きましたが、東京では7月29日に20万人が国会包囲のデモを行ないました。毎週金曜日の官邸デモは現在も続行されています。
 大飯周辺の関西の自治体である滋賀県の嘉田由紀子知事、京都府の山田啓二知事、大阪市の橋下徹市長、そして、関西広域連合が反対を表明したことは重要です。大阪府市のエネルギー戦略会議は4月10日、「原発再稼働の8条件」を、京都府と滋賀県の両知事は4月17日、7項目の「国民理解のための原発政策への提言」を発表しました。
 マスコミのアンケート調査を見ても、たとえば共同通信のアンケートでは大飯原発から30キロ圏の11市町、100キロ圏の9府県のうち、再稼働に前向きの自治体は高浜町と美浜町の2つに限られます。
 しかし、大阪市の橋下徹市長ら関西広域連合が5月30日、大飯再稼働を事実上容認したことから、6月17日の政府決定により7月1日からの再稼働となりました。
 大阪府市のエネルギー戦略会議は関西広域連合の再稼働反対を引っ張ってきました。わたしはこの点は評価しますが、橋下徹市長はこのエネルギー戦略会議の「当面休止」を表明しました。議会の議決が必要な条例に基づかず設置され、地方自治法に抵触するおそれがある、というのが表向きの理由ですが、どうやら大阪府市の脱原発も「風前の灯」の気配です。
 そもそも、橋下徹は憲法改正・日米同盟・沖縄基地・TPP・労働組合敵視のいずれを取っても、すべて保守本流の自民党に近い。唯一違うのは脱原発だけです。その橋下徹の脱原発も雲行きが怪しくなってきたので、なお見守る必要があります。

 

2 大飯の再稼働なくても今夏の電力は取りた

 

 政府と電力会社は「再稼働なければ電力不足」を極力宣伝してきました。関西電力は4月に今夏の電力不足をを16%と発表しましたが、政府は5月に15%と試算して節電対策を進めました。
 しかし、飯田哲也が主宰する環境エネルギー政策研究所は4月23日、「原発を再稼働しなくても夏の電力は足りる」とのデータを公表しました。 資料NO・1の「2011年並み節電時の政府見通しによる「不足」」を見て下さい。
 それによると、昨年11月の政府のエネルギー・環境会議のデータでは、北海道・関西・四国・九州電力で供給不足になるとの見通しでした。同月の経産省発表のデータでは(関電分は今年4月のデータ)、供給不足になるのは関電だけで5・5%の不足ですが、この不足は近隣の中部電力・北陸電力・中国電力の余力でカバーを期待できます。
 資料NO・1に挙げた飯田哲也の環境エネルギー政策研究所の推計を見ると、今年夏の電力需給は全国レベル、東日本3社、中西日本6社のいずれも、供給力が最大需要を上回っています。各電力会社ごとのデータも同様です。
 それでは、今夏の実績はどうだったか。資料NO・2の表に挙げていますように、関西広域連合は9月30日の「関西電力管内における今夏の電力需要実績等の検証について」で、最大需要の実績は想定を300万キロワット下回り、供給力の実績もピーク時で大飯3、4号機がなくとも248万キロワットの余裕があったことを示しています。
 また、政府の節電要請期間全体における電力使用率のデータを見ると、ケース1「大飯原発なし・今夏需要実績」では、電力使用率が100%超過の日はゼロでした。ケース2「大飯原発なし・昨年並み節電効果」では、100%超過の日は11日ありました。しかし、大事なのは「昨年並み節電効果」よりも「今夏需要実績」です。
 以上は、今夏の需要需給の実績ですが、そもそも日本の発電設備の容量は原発がなくても、電力は十分まかなえることを示しています。きょうの資料には挙げていませんが、官庁統計による市民エネルギー研究所のデータ(2011年11月、たんぽぽ舎の資料から)では、発電設備の容量は総計で2億8,172万キロワット(水力4,385万、火力13,507万、自家発電5,384万キロワット、原子力4,896万キロワット)、2010年最大電力が1億7,775万キロワットです。
 発電設備の総計から最大電力を差し引いた電力の余裕は、1億0,397万キロワットです。これから原子力の4,896万キロワットを差し引いても、なお5,501万キロワットも余っていることになります。つまり、日本の電力は年間を通して、余りに余っているのです。
 使える火力、水力、自家発電を有効に使い、自然エネルギー(再生エネルギー)を育成していけば、原子力など要らないことになるのです。日本の自然エネルギーは、水力を除くと電力全体の1%と微々たるものです。これは政府と電力会社が徹底的な原発シフトを敷き、いわば〝毒食わば皿まで〟で原発の比重を人為的かつ政策的に高めてきた結果です。
参考までに、フクシマの大惨事で脱原発を決定したドイツは、自然エネルギーを計画的に育成してきました。2000年の時点で6%だった自然エネルギーは、現在約20%を占めるに至っています。これをさらに2030年には35%まで高めようとしています。ドイツが脱原発を決定した背景には、こうした自然エネルギーの成長という事情もあったのです。
 7月1日から風力や太陽光などの自然エネルギー発電の普及を促す「固定価格買い取り制度」がスタートしました。表のように、固定価格買い取りは発電の種類によって異なります。自然エネルギーは電力会社の送電網を使って、家庭や企業に電力を届けますが、この制度によって自然エネルギーが一歩でも進むことを願ってやみません。

 

3 原発再稼働に前のめりの政府と電力会社

 

 日本の原子力行政はプレイヤー(事業者)とレフェリー(監督官庁)が一体で構造的に癒着しています。原子力規制の原子力安全委員会は内閣府のなかにあり、その実務を取り仕切る原子力安全・保安院は経済産業省の管轄下にあります。つまり、原発を推進する政府・官庁の掌の中にあったわけです。
 さすがに、フクシマの大惨事で批判を浴び、それらの機関を統合した原子力規制委員会が6月20日に発足しました。政府は9月19日に規制委員長と規制委員を決め、首相権限で任命しましたが、その顔触れを見ると、いわゆる原子力村(わたしは原子力マフィアと呼びますが)に関係した人が多く、批判を浴びました。
 資料NO・2の記事に出てきますように、委員長は前原子力委員会委員長代理で元日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)副理事長の田中俊一、委員は日本アイソトープ協会主査の中村佳代子、日本原子力研究開発機構副部門長の更田豊志、元国連大使の大島賢三、地震予知連絡会の島崎邦彦です。このうち、田中俊一、中村佳代子、更田豊志はいわゆる原子力村の出身です。
 資料3の記事を見て下さい。民主党政権のエネルギー・環境調査会は9月7日、「2030年代に原発ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」とする提言をまとめました。しかし、野田政権はこのエネルギー政策の閣議決定を見送りました。つまり、民主党の原発政策は玉虫色でどう変わるか分からないということです。
 最後に、資料NO・4の記事の住民投票と国民投票に移ります。左側の記事にありますように、10月11日の静岡県議会で県民投票が否決されました。わたしは8月25日の県東部教研集会で静岡県と新潟県の住民投票への期待を申し述べましたが、残念ながら記事にありますように静岡県で住民投票が否決されました。川勝平太知事は賛成意見を付けて条例案を議会に提出しましたが、自民党と民主党が多数を占める県議会でもみくちゃにされてつぶされました。
 その右側の記事はリトアニアの国民投票です。リトアニアは1986年に大事故を起こしたチェルノブイリ原発と同型のイグナリア原発の廃止を条件に、2004年にEUに加盟しましたが、ロシアからのエネルギーの独立を日立のビサギナス原発に託していましたが、10月14日の国民投票で過半数が反対を占めました。残念ながら、日本には住民投票・国民投票の制度がありませんが、わたしは原発も含めて住民投票・国民投票にかけることをかねてから提唱しています。
 安倍晋三が総裁になった自民党がもし政権を取れば、原発の大きな揺り戻しが起こるとと思います。いま、総裁選で安倍人気で世論調査で自民がトップになっていますが、民主はガタ落ち、維新の会も人気低落傾向にあります。維新の人気が落ちたのは、大飯原発再稼働を事実上容認したところから始まります。
 小沢一郎の国民の生活が第一が脱原発を打ち出し、リトアニアの国民投票の視察に行ったというのも皮肉な話です。しかし、どの政党に期待できるということはありません。それよりも、最近の報道で見たのですが、衆参92名の国会議員で「原発ゼロの会」が活動しているということの方がはるかに重要です。党派を超えた議員の連携で国会にクサビを打ち込むことを願います。

 

 

2012年度鳥取県教研集会 オープニング寸劇

「原発のないふるさとを! ~青谷の長尾鼻から反原発を叫ぼう~」

 

    作 にしかわ

 

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  キャスト
  【うた班】
   県教組教文部長
   うた班① 県教組東部支部長
   うた班②
   うた班③
   うた班④
   うた班⑤

 

  【げき班】
   高教組教文部長
   青年教育労働者
   青谷分会分会長
   土井淑平さん役
   横山光さん役
   生徒A
   生徒B
   教頭

 

   Hさんギターを持ってスタンバイ。うた班スタンバイ。

 

   「青空」(一番のみ)を歌う。

 

     青年教育労働者が生徒Aと話をしている。生徒Aの顔つきは暗い。

 

   青年   おい、A。なんだ、その服装は。シャツが出とるがな。
   生徒A  ・・・・。
   青年   おい、聞いとるだかいや。返事せぇや。それに、前髪も長いがな。
   生徒A  ・・・・。

 

     そこに、分会長と生徒Bがやってくる。生徒Aが怒られているのを見る。

 

   青年   おまえ、最近たるんどるぞ。その気持ちが服装頭髪に出るだがな。まったく。
   生徒A  ・・・・。
   青年   聞いとるだかいや(声を荒げる)
   生徒A  (何か言おうとするが、やめて横を向く)・・・。
   青年   おいっ。(肩をつかむ)

 

     分会長は青年の手をとり、

 

   分会長  ○○さん、落ち着こう。
   青年   あ、▽△先生。
   分会長  「先生」じゃなくてなあ、、、、まあ、今はそれはおいといて。どうしただいな。
   青年   服装のことで、指導していたんです。それなのに、Aときたら、ふざけた態度で。
   分会長  ふーん。(生徒Aを見て)A、最近、元気がないなあ。顔色もよくないぞ。大丈夫か?
   生徒A  ちょっと、家が・・・
   分会長  そうか、心配だなあ。話を聞かせてくれんか? 
   生徒A  (青年教育労働者をちょっと見て)ここでは、ちょっと・・・
   分会長  そうか、じゃあ、人権教育室行こうか。
   生徒A  (少し考えて)はい。

 

     分会長と生徒Aは上手へ

 

   青年   あ、ちょっと・・・
   生徒B  先生。熱血もいいですけど、もう少し、生徒一人ひとりのことを見ないと、空回りしてますよ。
   青年   空回り? え、な、何?
   生徒B  あいつんち、今、すげ、大変なんですよ。
   青年   え、そうなんか? そんなこと、Aは何も言わんかったぞ。
   生徒B  そりゃそうですよ。いきなり、注意して、怒って、上からかぶせられたら、誰だって何も言えませんよ。僕も人権教育室に行きます。先生、もう少しいろんなことを学習し         たほうがいいんじゃないですか?

 

     生徒B、上手へ去る。

 

   青年   な、な、な、なんだぁぁぁぁ。

 

   ――数日後の職朝にて

 

   教頭   以上で職員朝会を終わりま・・・
   分会長  はいっ。
   教頭   あ、どうぞ。
   分会長  組合連絡です。今度の土曜日に、青谷原発元建設予定地の草刈りをします。この青谷に30数年前に原発建設の計画がありました。
   青年   え、まじで。全然、知らんかった。
   教頭   うっそーーー。
   分会長  市民活動家や地元の人、私たちの先輩組合員により反対運動をし、建設を阻止しました。その土地にイモを植えるための草刈りです。都合のつく人はぜひ、参加して         ください。私も参加します。
   松本   ○○さんも参加しましょうよ。
   青年   でも、部活が・・。
   松本   組合員の特典は学習ですよ。学校から飛び出すだけでも、学習が深まりますよ。
   分会長  解放研部員の生徒Aと生徒Bも参加するって言っとるけぇ、○○さんも、ぜひ。
   青年   AやBも・・。学習・・・考えときます。

 

     「みんなウソだった」(一番のみ)を歌う。

 

     ――青谷 長尾鼻の畑

 

     みんな、鍬やら鎌やらスコップやらを持参。

 

   松本   あ、○○さん。来てくれただか。
   青年   はい。部活は、もう一人の顧問に頼みました。
   分会長  すごい、草むらになっとるなあ。
   生徒B  ここは、前は畑だったんでしょ?
   分会長  畑だったのは何十年も前だけぇな。今は見事に草ぼうぼうだな。
   生徒A  あ、○○先生も参加ですか。
   青年   ま、まあな(ポリポリと頭をかく)。
   生徒B  先生、ぼくたちと一緒に学習しましょうね。
   青年   むむむむむ。
   分会長  むむむ、教頭までいるぞ。
   教頭   まあ、入れてぇな。
   横山さん (ハンドマイクを持って)みなさん、朝はやくから、おはようございます。
   みんな  おはようございまーす。
   横山さん 私は、青谷小の横山と言います。こちらは、当時、一緒に反対運動をした市民活動家の土井淑平さんです。
   土井さん 土井です。よろしくお願いします。
   みんな  よろしくお願いしまーす。
   横山さん この辺りの土地を30数年前の反対運動の時に買ったんですね。ここは「寺屋敷」という所です。この下が「松ヶ谷」です。ちょっとくぼんだ所に原発設置が計画されま          した。
   生徒A  なぜ、くぼんだ所なんですか? 長尾鼻岬ではないんですか?

 

     生徒が質問をくりだす度に、青年教育労働者は驚く。

 

   土井さん 日本の原発は、人目につかないところに設置されているんですよ。
   生徒B  なぜ、人目につかないところに設置するんですか?
   土井さん 「ある」と意識させないためです。見えないと意識しなくなるものです。そして、無関心になり、事態はどんどん深刻になる。
   生徒A  部落問題もそうですよね。
   分会長  なるほど。
   生徒B  権力がある人たちは、自分たちに都合の悪いものは隠すんですね。
   分会長  だから、自分たちで学ぶことが大切なんだな。
   生徒B  青谷原発設置反対運動のことがもっと知りたいです。
   M     Aさん、今日は時間がないから、この本を読もうね。
   生徒A・B  『原発のないふるさとを』
   土井さん いい本ですよ。
   分会長  もちろん、読みましたよ。

 

     横山さん、松本さんはうなずく。青年教育労働者は生徒A、Bに見られ、首を横にふる。

 

   横山さん  さあ、みなさん、草をひっこ抜きましょう。
   みんな   おーーー。

 

     各々、作業。

 

   青年   30数年前に反対運動がなかったら、今ごろどうなってたんだろうな。ここに、原発があったら・・・。昔のことじゃなく、現在進行形で危機感を持たないといけないことなん         だよなあ。
   生徒A  何ぶつぶつ言ってるんですか?
   青年   いや、カッコントウしぶといなあって。・・なあ、AもBも質問して、すごいなあ。
   生徒B  「なぜ?」って考えたり、議論したりすることは楽しいですよ。
   生徒A  「なぜ、自分は青谷に原発が設置されようとしていたことを今まで知らなかったんだろう」と考えることが大切ですよね。
   青年   え、それは僕に聞いとるんか?
   生徒A  いいえ、みんなです(と言って観客を指さす)

 

     青年と生徒A、Bは観客席を眺めまわす。

 

   青年   今まで、反原発とか反核とか反差別とか、「誰か」が何とかしてくれるものだという意識があったことに気づいた。
   生徒A  先生からそんな言葉が聞けると思ってなかった・・
   生徒B  やればできるがな。
   分会長  学習の効果だな。はっはっは。
   松本   平和を守り真実をつらぬく民主教育の確立を目の前で見ている気がする。
   分会長  お、さすが教文部長!

 

     「イマジン」を歌うため、橋本さんを先頭にうた班登場。手には、青谷の草取りから、イモ植えの写真を持っている。
     「イマジン」を歌う。

 

   松本   今日は、若者たちが来てくれてよかった。
   横山さん 本当に。うれしいことですね。
   分会長  で、イモ掘りはいつですか?
   横山さん 10月28日日曜日です。みなさん、来てくださいよ。

   FIN

 

(追記)以下は寸劇で案内した青谷共有地でのイモ掘り当日の風景です。

    1980年代の青谷原発立地阻止運動で、鳥取県内の市民約200人が、原発予定地の土地7箇所を買占め共有化しました。

    その共有地の1つを脱原発の拠点として、フクシマ後の2012年春にさつまいもを植え、10月28日の収穫に幼い子供から老人まで、50人の老若男女が参加しました。

 

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