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土井淑平著『都市論 〔その文明史的考察〕』(三一書房、1997年)関連情報

 

     目次は著書一覧を参照して下さい。

 

◎ブックレビュー


・『都市論』紹介

 月刊『むすぶ』(1997年9月)より

 

 ベトナム反戦と大学紛争で揺れた一九六〇年代末、いわゆる革新自治体の登場を背景に出版されベストセラーとなった羽仁五郎の『都市の論理』以来、久方振りに市民の自治に着目した都市論のポレミークが出た。
 本書は市民の自治をキイワードに、ルイス・マンフォードやマックス・ウェーバーをはじめ内外の膨大な文献を駆使しつつ、都市の歴史を洗い直し、「都市と市民」「都市と農村」「都市とデザイン」「都市と交通」「都市とエコロジー」といった多彩なテーマを取り上げた包括的な都市論である。
 著者は市民自治の源流を初期シュメールとギリシア・ローマの都市国家に求め、ついでコミューン運動の革命的成果としてのヨーロッパ中世都市の市民自治の意義を力説する一方、日本の都市と社会には「市民」と「自治」の伝統がなく、薬害エイズ問題などで露呈した昨今の官僚国家の腐敗もこれと無関係ではないと示唆する。
 著者によれば、都市は都市だけで成り立つものではなく、歴史的にエコロジーと文化の両面で農村との共生関係にあった。だが、都市と農村のこの共生も、近年の急速な工業化と都市化によって破壊され、日本のみならず世界的傾向として、両者は沈みゆく農村と荒廃した超過密の巨大都市へと引き裂かれ、この都市と農村をともに巻き込む相互的危機こそ、今日のいわゆる地球環境危機の根底にあるものだという。
 大都市の過密と荒廃に拍車をかけたル・コルビュジエ流の近代都市計画と近代建築運動の批判も本書の重要な論点で、今後の都市計画の在り方をめぐって、都市と農村の長所を結びつけようとしたエベニザー・ハワードの田園都市と都市連合の構想を継承し、新しい都市=農村複合型の開放的都市様式の模索が必要だとしている。
 二〇世紀の近代都市計画と近代建築運動に大きな影響を与えたのはアメリカに始まるモータリゼーションの進展だが、これにより人と人との出会いの場所、市民の公共の空間としての都市が破壊されているとして、著者はヨーロッパなどの最近の動向をもとに、都市におけるクルマの制限と歩行者・自転車・公共交通を優先した都市政策を提言している。
 終章の「都市とエコロジー」では、東京を例に巨大都市が生態学的にいかに病んでいるかが具体的に分析され、都市の分散と市民自治の方向性も示される。百科全書的な都市論なので、巻末の詳細な索引と文献を手引きに、座右に置き折りに触れて参照するにも便利だ。    

 (編集部)

 

◎『都市論』トピック


・『都市論』が立命館大学の入試問題(国語)に


 1998年度の立命館大学の経営学部A方式と全学部E方式の国語の入試問題に、土井淑平『都市論』(三一書房、1997年)の第五章「都市と農村(2) ― 文化の比較」の一節が出題されました。
 (同書147ページ9行目~148ページ6行目、149ページ15行目~150ページ15行目、151ページ5行目~152ページ6行目)

 

・『都市論』が立命館大学オンラインシラバスの参考書に


 土井淑平『都市論』が、ワイツゼッカー『地球環境政策』(有斐閣)、マンフォード『都市の文化』(鹿島出版会)、E・ハワード『明日の田園都市』(鹿島出版会)、渡辺俊一『都市計画の誕生』(柏書房)とともに、五冊の参考書にリストアップされました。

 

 

       書名

       Titile

       著者

      Author

      出版社

     Publisher

   都市論    土井淑平    三一書房
   地球環境政策    ワイツゼッカー    有斐閣
   都市の文化    マンフォード    鹿島出版会
   明日の田園都市    Eハワード    鹿島出版会
   都市計画の誕生    渡辺俊一    柏書房