鳥取市内の放射性廃棄物

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鳥取市内に不法投棄された放射性廃棄物

 

はじめに

 


川内原発再稼働といった大きな問題ではありませんが、鳥取市内に不法投棄された放射性廃棄物が2年にもなるのに放置されています。この問題の事実経過を報告し、これをどうすべきか皆様とともに考えたいと思います。


1 不法投棄された廃棄物から高い放射線                 


 1昨年つまり2013年1月、鳥取市岩倉の山中の市道脇に不法投棄された粘着テープ様の廃棄物やコンクリート殻から高い放射線を検出した、というニュースを新聞で目にしました。

(記事1 『日本海新聞』2013年1月31日「高い放射線を検出 不法投棄の廃棄物から」)
その翌日には、現場から北に400メートル離れた鳥取市滝山の市道脇でも、新たに高い放射線量の廃棄物が見つかっています。
(記事2 『朝日新聞』2013年2月2日「高放射線量廃棄物/北側400メートル」)でも発見))
それから2年経って、この不法投棄廃棄物が撤去されず、撤去のメドもたっていないことを知りました。
(記事3 『毎日新聞』2015年2月7日「放射性廃棄物投棄 2年経過
撤去めど立たず」)
2年前の新聞記事で放射性廃棄物の不法投棄を目にしたとき、わたしは間もなく不法投棄廃棄物は現場から撤去されるだろうとタカをくくっていました。このため、2年後の新聞で、まだ撤去されず、現場に放置されたままだということを知って驚くとともに、自分の怠慢を恥じました。
なぜなら、わたしはウラン残土という原子力開発の入口の核のゴミ(正確には核の毒)である放射性棄物の問題に取り組んできた者の1人であったからです。つまり、ウラン鉱山跡地の核のゴミは撤去せよと言いながら、自分の足元の核のゴミには見て見ぬふりするに等しいわけです。
それだけでなく、1人の市民としても、市民が通る市道脇に投棄された核のゴミを黙視するのは、市民としての責任を問われる行為と考えざるを得ませんでした。わたしは「触らぬ神に祟りなし」の類の怯懦で無責任な立場を取りません。それは市民の間で活動する者の責任とモラルに反するからです。


2 放射線量

 

 まず、この放射性廃棄物の放射線のレベルを見ておきましょう。鳥取県のホームページ「鳥ネット」に掲載されている「鳥取市岩倉地内における放射能レベルの高い廃棄物の発見について」(第一報)(1月30日)によれば、岩倉の廃棄物は
・粘着テープ様の廃棄物:毎時24マイクロシーベルト(→年間換算210ミリシーベルト)
・コンクリート殻:毎時6.12マイクロシーベルト(→年間換算53.6ミリシーベルト)
放射線量の高さを比較するには年間換算で見た方が分かりやすいので、年間換算で見ると210ミリシーベルトと異常な高さになります。
一方、滝山の廃棄物は
・ビニール袋の粉:毎時22マイクロシーベルト(→年間換算192.7ミリシーベルト)
・直近の道路上:毎時0.11マイクロシーベルト(→年間換算0.964ミリシーベルト)
これで見る限り、滝山の「ビニール袋内の粉が固まったもの」毎時22マイクロシーベルトは岩倉の「粘着テープ様の廃棄物」毎時24マイクロシーベルトとほぼ同レベルの放射線量といえます。つまり、これらの値に24時間×365日をかけて、1000で割ると、200ミリシーベルト前後の高線量となります。
県は「一般土壌に比較すると、1000倍~2000倍の放射能であるものの、飛散などのおそれも少なく、当該場所に2時間滞在した場合でも、胸のⅩ線集団検診1回分程度で、人体に影響を及ぼすおそれは非常に低いと考えられます」(報道発表資料第4報、2015年2月1日)と言っています。

 

3 核種分析


鳥取県は「鳥取市岩倉地内における放射線レベルの高い廃棄物の発見について」(第2報)(2015年1月30日)で、岩倉の不法投棄廃棄物の核種分析結果を発表しています。

(表1 岩倉の不法投棄廃棄物の核種分析結果)

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同じく第4報(2015年2月1日には滝山の不法投棄廃棄物の核種分析結果が載っています。

(表2 滝山の不法投棄廃棄物の核種分析結果)

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 県はこの核種分析結果に基づいて、「ごくわずかに人工核種が見られるものの」、「大部分がラジウム、或はラジウムが崩壊してできる鉛やビスマスなど天然核種であり、原子炉生成物質を疑うセシウム143などは含まれていませんでした」と説明しています。
わたしは、核種分析結果の一覧表を見たとたん、これはウラン系列の放射性核種、つまり、ウラン鉱山に由来する放射性核種ではないかと直観しました。
参考までに、ウラン鉱山に由来するウラン238の崩壊系列の核種は以下です。
(表3 ウラン238から始まる崩壊系列)

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 総じて、岩倉、滝山の不法投棄廃棄物の主体は、ウラン鉱山に由来するウラン238の崩壊系列か、ないしは、何かのために保管していたラジウム224の崩壊系列ではないかと思われます。それは医療廃棄物か健康器具メーカーや研究機関のものだった可能性もあります。
岩倉、滝山の不法投棄廃棄物の核種で言うと、ウラン238の崩壊系列でない核種はネプツニウム、セリウム、ベリリウム、タリウム、イットリウム、カリウム、アンチモン、ニオブ、ルテニウムです。


4 行政の対応

 

 行政の対応を見ますと、鳥取県が主導して知事、副知事、統轄官、危機管理局長、福祉保健部長、生活環境部長、警察本部、鳥取市による対策会議を実施し情報の共有と今後の対応を協議しています。
鳥取県と鳥取市は、不法投棄廃棄物を岩倉側の1カ所に集めて土のうに詰めて保管していましたが、昨年8月には金属製のぺール缶に移し替え、ブルーシートで覆い、その周りを有刺鉄線で囲っています。

(写真1 岩倉の投棄地の1カ所に集めてブルーシートで覆われた廃棄物)


                    鳥取市岩倉の道路わきの一箇所に集められた不法投棄放射性廃棄物

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 これまで鳥ネットの第一報から第四報まで出ていますが、新聞報道によると、鳥取県は予備費2000万円を投じて新たに15台の監視カメラを購入するほか、機材の整備やパトロールの強化を確認しています。
 今回の不法投棄廃棄物をめぐって、県は国の関係3省庁に適正な処分を求めていますが、各省庁とも法令に照らして「規定外」として廃棄物は宙に浮いています。このため、平井伸治知事が「法の不備」だとして、あらためて国に「関係法令の整備」を求めていくということです。


5 国の対応

 

 新聞報道によると、環境省は管轄の「廃棄物処理法」では、放射性物質は「対象外」と規定しています。したがって、県も市も一般ゴミとして処理できません。
放射性物質は文科省や原子力規制庁の管轄になりますが、文科省は日本原子力研究開発機構の主管官庁で、ウラン鉱山を管轄しています。原子力規制庁は3.11以後にできた原子力官庁です。
 原子力規制庁は、検出された放射性物質が「原子炉等規制法」で管理する原子力発電所由来でなく、「放射線障害防止法」で規定する人工系物質でもないことから、積極的に関与しようとする姿勢は見られないと言います
 こうして、関係省庁は「管轄外」との認識を示しているそうです。平井知事が「法の不備」「制度設計上の穴」と言うのももっともなことで、2015年2月9日には上京して原子力規制庁を訪れ、池田克彦長官と面談し財政的な支援や処理先の斡旋も含めて「制度改正」を求めました。


6 地元自治会

 

 現在の保管場所は「岩倉外13カ村」の地元自治会(元は複数の村)の所有地です。「岩倉村外13カ村」は、わたしが所属する大杙(おおくい)という地区も加わっている共有地で、毎年1回共有地の所有者の地区代表(村長または区長)が集まって会合が開かれます。
 わたしが大杙の区長だったいまから10年以上も前の1990年代、この「岩倉外13カ村」の会合で「農薬の空中散布は、健康被害があるので、やめてもらおう」とわたしが提案し、了解を得て13カ村の意思として鳥取市に「農薬空中散布反対」を申し出て、この共有地への散布を実際に中止させたことがあります。当時、この共有地でシイタケを栽培していたので、そのシイタケの原木が農薬で汚染されたら大変との危惧からです。
 かつて全国で農薬空中散布反対運動が闘われ、わたしたちも鳥取県で無党派の市民グループ「鳥取県農薬空中散布反対ネットワーク」を組み、反対運動をやりました。(本ホームページに掲載の私の講演「ふるさとの環境運動」の3「松枯れ農薬空中散布反対運動」参照)
 メンバーは反原発のメンバーとかなりだぶっていましたが、鳥取市の場合、農薬ヘリの出撃基地は湖山池の青島で、ここは子どもが家族連れで遊びにくる場所でした。この青島で、散布農薬をヘリに積み込むさい、それが流出すると言う問題が起きました。また、鳥取市上原の簡易水道の水源地が散布農薬で汚染されるという問題も起きました。(上記土井の講演「ふるさとの環境運動」の3「松枯れ農薬空中散布反対運動」参照)
 ところで、鳥取市の放射性廃棄物の問題に帰りますが、不法投棄されたで岩倉周辺の地元自治会は、2015年度末を期限とする「早期搬出」の覚書を市と交わしていました。しかし、国の方針が定まらないため2年間延長となりました。
 鳥取県は国への要望と並行して、独自のルートでも受け入れ可能な企業や団体がないか打診してきましたが、新聞報道によれば、約100の業者のいずれからも受け入れを拒否されたそうです。核のゴミを嫌うのは住民だけではないわけで、その取り扱いの厄介さをあらためて浮き彫りにしています。


7 鳥取県生活環境部に不法投棄廃棄物の現状を聞く

 

 ウラン残土市民会議のわたしは、えねみら・とっとりのメンバーとともに、10月5日、鳥取県の生活環境部を訪ね、鳥取市内の不法投棄廃棄物の現状を聞きました。(2015年10月9日の『毎日新聞』鳥取版「鳥取の放射性廃棄物/規制庁に指針改正求める」参照)
応対した水・大気環境課の中村吉孝課長は、まず、この不法投棄廃棄物の中身について、それがラドンを発生させる健康器具の廃棄物の可能性があると示唆しました。
 つぎに、鳥取県が国との交渉のなかで、とくに原子力規制庁の「ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドライン」を改正し、消費者が捨てる時の方法やリサイクルの仕方、製造者への回収責任などを加えるよう求めていることを明らかにしました。
ところで、あくまで可能性としての想定とはいえ、鳥取市内の不法投棄物はラドンを発生させる健康器具の廃棄物の一部ではないか、という鳥取県の生活環境部の見方に、わたしはふと思い当たるものを感じました。
 というのも、かつてのウラン残土撤去運動の最中、わたしは講演や集会などで行く先々の町で、「ラドン温泉」の看板を目にして、日本人のはやり病の「ラドン信仰」の流行に嘆かわしい感情を抱いていたからです。
 ラドンはウラン鉱山で悪名高い肺ガンの原因物質です。ラジウム温泉やラドン温泉は、よほど排気に注意しないと危険で、世にはびこる「ラドン温泉」がニセモノなら詐欺まがいの商法とはいえ、もうけものと言わざるを得ません。
 わたしはかねてから三朝町のラジウム温泉の宣伝に問題あり、と主張してきました。ウラン鉱山のラドンは危険だが、ラジウム温泉やラドン温泉から出るラドンは体にいい、などということはあり得ません。まったく非科学的な見解です。
 鳥取市内に不法投棄された放射性廃棄物は2年半も動かず現状のままですが、わたしは鳥取県が法整備に一歩踏み込んで国と交渉を詰めていることを評価し、当面は県の交渉と国の対応を見守ることにしたいと思います。

 

補足 3・11以後の放射能の規制緩和と廃炉時代の核のゴミのスソ切り

 

1 不法投棄放射性廃棄物の緊急避難の「受け入れ先」の確保と管理を

 

 わたしは鳥取市民の1人として、市道脇に放置された岩倉、滝山の放射性廃棄物を黙視できません。国が動かないなら、鳥取県と鳥取市の行政に対処してもらいたいと考えざるを得ません。やはり、保管先を確保することが先決です。国への働きかけの強化と合わせて、受け入れ先の確保の努力は引き続きやってもらいたいところです。
 すでに鳥取県は当たった業者から受け入れを拒否されていますが、民間の業者がダメなら県有地なり国有地を検討してはどうでしょうか。平井知事の言う国の「法の不備」は明らかです。どうしても法的根拠が必要であれば、鳥取県が要綱や条例のような独自のルールをつくって対処すればいいのではないかと考えます。要綱や条例はかつて日本の自治体が住宅政策や都市政策で、国の乱開発に対抗して自分たちの町や環境を守るために取った自衛の方策でした。
 今回の事例は国の法の空白を埋めて、危険物を撤去するためのやむ得ざる緊急避難の措置なので国の了解も得られるはずです。後日、国が法整備を行なったら、それに合わせればいいわけです。なお、その要綱または条例で、不法投棄法放射性廃棄物の保管の受け入れだけでなく、外部に漏らさないなど暫定「管理」のための基本的な規定を明文化しておくのが望ましいと思います。
 むろん、緊急避難の保管の受け入れ先が、将来の放射性廃棄物の処分場として狙われてはたまりませんから、そういうことが決してないよう、何らかの方法で一定の歯止めをかけておく必要もあると思います。


2 3・11後のクリアランス・レベルの引き上げ

 

 これまで、原発から出る放射性廃棄物は、1キログラム当たりセシウムが100ベクレル以下の放射性物質は、普通のゴミとして処理することができることになっていました(クリアランス・レベル)。これ以上のレベルの放射性廃棄物は、性質や濃度に応じて黄色のドラム缶に密閉したり、コンクリートで固めて埋めたりしていました。
 ところが、福島第一原発事故後の2011年8月には、この原発事故に由来する放射能汚染の「特別措置法」ができ、国はクリアランスのレベルを一気に80倍の8000ベクレルに引き上げました。しかも、それを一般廃棄物(家庭ゴミ)の処分場で焼却・埋め立てしても法律上の問題はない、というとんでもないオマケまで付けてです。
 福島第一原発事故のドサクサまぎれのこうした規制緩和は、原発重大事故のような緊急時の被ばく限度を250ミリシーベルトに引き上げる現政権の法改正の動きにも見られます。


3 「汚染ガレキの広域処理」でバラまかれた復興予算

 

 国は福島第一原発事故で環境省を中心に1兆円規模の復興予算をばらまき、「汚染ガレキの広域処理」を進めようとしました。震災で2000万トンのガレキが発生したとされ、環境省はこのうち400万トンのガレキ処理の協力を全国の自治体に呼びかけたのです。
 汚染ガレキを処理すれば、環境省から1トン当たり2万円から10万円の補助を受けられるというので、全国の自治体からガレキ受け入れの希望が殺到しました。鳥取県米子市も手を挙げた自治体の一つです。
 この国の「汚染ガレキの広域処理」の背景には、新日鉄を筆頭に三菱重工、日立造船など大手鉄鋼各社を中心とした焼却炉メーカーの焼却炉利権や、ガレキを遠距離に運ぶ大手ゼネコンのゼネコン利権があったと考えられます。
 「かくして、フクシマの除染や東日本大震災の復旧に取り組むと称する官庁も大手ゼネコンも大手鉄鋼各社も、つまり官民総絡みでシロアリかハイエナのごとく群がり、それぞれ〝利権あさり〟に余念がないことを白日のもとにさらしたのである」(土井淑平『フクシマ・沖縄・四日市』、編集工房朔発行、星雲社発売、2013年)の第一章「フクシマ」四「放射能は右から左に移せど消えず除染は移染」)
 「結局は「がれき」ではなく「お金」(補助金)の広域処理だった」(澤田嵐『日本が〝核のゴミ捨て場〟になる日 震災がれき問題の実像』、旬報社、2015年6月)


4 廃炉時代の核のゴミのスソ切りに注意しよう

 

  「汚染ガレキの広域処理」には、全国各地で反対運動が起きました。米子市でも起きたように、その事実は知っていましたが、わたしも全国各地の反対運動の現場の詳細は、澤田嵐の『日本が〝核のゴミ捨て場〟になる日 震災がれき問題の実像』に接するまで、承知していませんでした。この本は自らの活動に基づいた汚染ガレキ反対運動の貴重な記録であると同時に、廃炉時代にむけた「クリアランス」つまり「核のゴミのスソ切り」について重大な警告を発しています。
 今回の鳥取市内の市道脇に不法投棄された放射性廃棄物は、東日本の汚染ガレキとは関係ないと思いますが、汚染ガレキの処理を米子市が受け入れる前提は「国の要請」でした。汚染ガレキの総量は当初予想で2000万トンでしたが、実際の総量は3割も減って、「広域処理」の必要がなくなりました。結局、米子市への「国の要請」はなく、ガレキ処理の話は立ち消えになったようです。
 この「汚染ガレキの広域処理」の底流に、廃炉時代を迎えてクリアランス・レベルの引き上げによる核のゴミのスソ切りなど、放射性廃棄物処理の大幅な規制緩和の意図が隠されていたことは否定できません。
 繰り返しますが、わたしは鳥取市の不法投棄廃棄物は、国が法整備に踏み切らなければ、たとえば県条例をつくってでも緊急避難して暫定的に保管すべきと考えますが、そのさい県条例や国の法整備が「クリアランス」と呼ばれる「核のゴミのスソ切り」にならないよう注意する必要があります。
 加えて、緊急避難の暫定保管の場所が、将来の放射性廃棄物の処分場として狙われないために、一定の有効な歯止めの措置をかけておく必要があることも、繰り返すまでもありません。

                                                                                                 (2015年10月13日記)