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土井淑平著
『原発と御用学者 - 湯川秀樹から吉本隆明まで』

 

  ◇2012年9月5日配本
  ◇発行=三一書房
  ◇118ページ、定価1000円+税

 

 

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目次

 

 序 文 福島第一原発事故から大飯原発再稼働へ

 

 第1章 帝国大学の設立と総力戦下の科学動員
      ― 帝国主義科学or植民地科学


 第2章 戦時下の原爆製造計画から原子力の平和利用へ
      ― 湯川秀樹と武谷三男

 

 第3章 戦後の原水爆禁止運動と原子力発電所の建設
      ― 中曽根康弘と正力松太郎

 

 第4章 原子力発電・核燃料サイクル・核武装研究
      ― 田中角栄と佐藤栄作

 

 第5章 原子力発電を擁護した戦後の科学運動
      ― 民主主義科学者協会と日本科学者会議

 

 第6章 そっくりさんの新左翼知識人と旧左翼共産党
      ― 吉本隆明と日本共産党

 

 第7章 福島第一原発事故と科学者の社会的責任
      ― 科学・技術・倫理・責任

 

 あとがき

 

 

著者の言葉


 3・11フクシマの大惨事は、政府・官庁と原子力産業・財界が国策として進めてきた原子力推進政策の破綻を意味します。そのツケはあまりにも大きく、住民の被害と環境の汚染は取り返しがつかないほどです。
 この国策の推進母体たる「原子力村」が世間でクローズアップされていますが、わたしはこの「原子力村」を「原子力マフィア」と言い換えて使うことにしています。
 この間、つぎからつぎに登場した「御用学者」も「原子力マフィア」の重要で不可欠の構成員です。かれらはフクシマの大惨事を打ち消すべく、クロをシロと言いくるめて、政府や電力会社にゴマをすり、市民をごまかすことに専念しています。かれらは政治に身を売る科学の売春婦です。
 わたしが本書で明らかにしたように、その「御用学者」は明治以来の近代日本の「帝国主義科学」or「植民地科学」に歴史的ルーツを持ち、第2次世界大戦下の「国家総動員体制」による「科学動員」を背景にしています。
 明治以来、科学は国家の政治と密接に関係し、いわゆる「帝国大学」が「戦争政策」の産物として生み落とされてきましたが、この「帝国大学」こそ今日の日本の「御用学者」の出身母体であり、日本の科学は政治との絡み合いを抜きには語れません。
 いわゆる戦時下の「科学動員」は、湯川秀樹や武谷三男なども参画した「原爆の製造研究」に氷山の一角を見ますが、かれらは同時に戦後の「原子力の平和利用」の提唱者でもあり、その一翼を担ったという原罪を背負っています。
 日本に原発を導入したのは中曽根康弘と正力松太郎です。その原発の利権構造を確立し自ら真っ先にご利益に預かったのは田中角栄です。自民党政権は岸信介以来、核兵器開発に執念を燃やしてきましたが、とりわけ佐藤栄作政権下で「原発の建設」と並行して、「核兵器の製造研究」が秘かに進められてきたことも、忘れてならないことです。
 政府・官庁の国策としての「原発の推進」の裏側には、日本の「核兵器製造の技術的能力」の確保という要請がありました。つまり、「原発」は「核兵器製造」の担保ないしはダミーという任務を背負わされてきたのです。
 今日に至るまで、どう考えても無駄で危険な高速増殖炉原型炉「もんじゅ」や六ヶ所村の再処理工場に、政府・官庁が湯水のごとく膨大な予算を投入してきた理由も、いま指摘した「核兵器製造」の担保ないしはダミーという秘密の任務から読み解けます。
 戦後の「原子力の平和利用」を擁護したのが民主主義科学者協会(民科)、および、その後継の日本科学者会議(日科)でしたが、民科や日科の指導部は共産党の支配下にありました。
 共産党は戦後まもなく書記長の徳田球一が、武谷三男の影響で「原爆の平和利用」を唱えて以来、「原子力の平和利用」に賛成で原発の条件付き推進勢力でした。その共産党が「脱原発」に舵を切ったのは3・11フクシマ以後のことです。
 ところで、本書のサブ・タイトルは「湯川秀樹から吉本隆明まで」となっています。吉本隆明は詩人・文芸批評家・思想家ですが、もともと東工大出身の科学技術者で「自然科学者としての吉本隆明」という論文もあるくらいです。
 吉本隆明はフクシマの大惨事のあとも亡くなる直前まで、原発を「科学技術の進歩」とか「文明の発達」の擦り切れた名目で弁護し、ことし新年早々の『週刊新潮』では反原発派に向かって「反原発で猿になる!」、とそれこそ猿のように吠えていたことから、かれを「原発の御用学者」の末席に加えても、何らおかしいことではないと思います。
 1960年安保闘争で当時の反日共系全学連を支持して、新左翼知識人のスターに躍り出て、つい最近まで自分は「新・新左翼」だと自称したてきました。しかし、フクシマ以後の「新右翼」の雑誌『撃論』に、元航空幕僚長の田母神俊雄や自民党派閥の町村信考などと登場して、脱原発の攻撃に余念がないところなど、むしろ「新右翼」ないしは「新・新右翼」と呼ぶにふさわしい。
 そればかりか、わたしが本書で疑問の余地なき証拠の数々を挙げて示したように、少なくとも原発問題でわが反日共系の「新左翼知識人」が「共産党そっくりさん」の旧左翼もどきの正体をさらけ出したのですから、笑うに笑えない喜劇というか笑劇ではありませんか。
 吉本隆明のような逆立ちした「新左翼知識人」や科学の売春婦たる「御用学者」に比べれば、戦時下の原爆研究に手を染めながら、ラッセル・アインシュタイン宣言やパグウォッシュ会議の流れを汲み、やがて「科学と倫理」あるいは「科学者の社会的責任」を深く自覚するに至った湯川秀樹や朝永振一郎の言葉は、かれらに煎じて飲ませたいほど貴重です。
 わたしは本書で、原発を推進してきた日本の科学者と政治家の社会的責任を歴史的に追及し、「科学とは何か」「科学と技術」「科学と倫理」「科学者の社会的責任」といったテーマについて考察しました。フクシマの大惨事の責任を考える上で何かのヒントになればと願っています。

 

(2012年9月5日)

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